二日目は海士町でブランド化を図っている施設を見学させていただきました。牡蠣の養殖工場、海藻研究施設、隠岐牛の畜産現場などです。
それぞれ、海士いわがき生産株式会社、海士町漁業研修施設、海藻センター、有限会社隠岐潮風ファームです。最後に株式会社ふるさと海士、承久海道キンニャモニャセンターを訪問しました。
いわがきは春香というブランドで東京に販売しています。ここで生産されているのは高級牡蠣で東京のオイスターバーの80パーセントのシェアを占めています。種苗生産から養殖、出荷までを一貫して行い、高品質な牡蠣の安定生産、安定供給できる体制を取っています。
続いて隠岐牛の生産です。牛肉への新規参入でしたが、今では松阪牛と同じ高いレベルの品質で、取引価格も最高級肉の扱いを受けています。月間12頭の生産なので隠岐牛は東京市場にだけ出荷されていて、全国に出回っていません。幻の黒毛和牛は、肉質が柔らかく溶けるような味わいです。そして一頭から取れる最高級ランクのA5の比率が高く、とても高価な牛肉となっています。
そして海藻センターでは、ナマコやアワビが好んで食する海藻の調査を行ったり、そんな海藻が早く生育するための条件、例えば海温や日照時間による生育度合いの変化などを研究しています。海藻が良いことがナマコやアワビの高品質、生産の安定化につながるので、全国的にも珍しい海藻の研究施設を所有しています。この研究は次世代に豊かな海を引き継ぐためでもあります。海の恵みが大きい海士町でも、近年は磯焼けが発生しているようです。海藻が少なくなるとナマコやアワビも減少しますから、将来に亘って海の食資源を絶やさないためには海藻の生育が必要です。「島で活き、島で生きる」ための研究を行っています。
そしてキンニャモニャセンターです。ここはフェリー乗降場で町の玄関口であり、ここに交流拠点を設けることで、交流人口の拡大と観光振興、利用者の利便性向上を目指しています。何よりも町職員さんが365日勤務しているので、お客さんや町民が望んでいることが直接把握できることにつながり、そこから役場として実施すべき産業振興策に素早く展開することができます。
これらの施設は全て公設民営方式によるものであり、町とやる気のある人達が一緒になって海士町のブランド品を生産、販売しています。
役場は住民総合サービス株式会社であり、町長は社長、副町長は専務、管理職は取締役、職員は社員であると意識を持って仕事をしています。同行してくれた課長に聞いたところ、「町長が変わってから明らかに意識が変わりました。今では休日に出勤することは当たり前だと思っています」と意識の高い答えが返ってきました。そして課長以上で構成する経営会議は毎週木曜日の午後5時15分から開催しています。業務に支障の無い終業時間外に経営会議を行っているのです。
町の方針として、お金が無い、前例が無い、制度が無い、だから出来ないという言葉は禁句となっています。株主であり消費者でもある町民の要望は役所として受け止める姿勢を貫いています。地域活性化は人の交流が必要であり、島がこの先生き延びるためには、若者とよそ者を受け入れる姿勢が必要であると考えています。ここでは異質を採り入れ、多様化を図り成長する産業戦略を取っています。
現場でも素晴らしい取り組み姿勢があり、やる気と熱意を感じられました。そして海士町のロゴマークは「ないものはない」です。これは「無くてもよい。大事なことはすべてここにある」という生き方を発信しています。
海士町での視察を終え、フェリーで隠岐の島に渡りました。