改新クラブの視察のため三日間、和歌山県を不在にします。視察先は島根県の隠岐の島町と海士町の二箇所です。初日は伊丹空港から隠岐空港まで飛び、そこからフェリーで海士町まで行きました。初日の目的は海士町の山内道雄町長と懇談することにありました。
離島発のビジネスによって町の過疎対策と経済対策、そして雇用対策を実践している町長として名高く、是非懇談したいと依頼したところ時間を確保してくれたのです。
会ってみて、噂以上の町長であることが分かりました。柔軟なアイデア、アイデアを具体化させる企画力、そして議会を押し切るエネルギー、若い人と一緒にビジネス化を図っている行動力など、取り組みの全てにおいて尊敬できる人物です。
元々NTTの従業員でしたが、海士町にやってきて町会議員から町長になっています。一言で町改革を実践していますが、改革という言葉が陳腐に感じられるほどです。
まず産業が無く公共事業頼みの海士町が財政難になった頃、山内町長は選挙に勝ち町を預かることになりました。公共事業は島根県や国からの予算に基づくものですが、平成の大合併を拒否して単独町政を貫いた海士町に対して島根県は冷たく、補助金などの支援を縮小されたようです。そこで公共事業から脱却して新しい産業を創造し、そのビジネス展開を目指すことを目標に掲げました。
そんな町の方針は「自立、挑戦、交流」で、行政方針ではなく経営方針としているところに意気込みが感じられます。町の財政健全化のために必要なことは町を経営することであり、そのために町と民間事業者が一緒に産業振興と商品開発を行うことになりました。島をまるごとブランド化することで地産地商を目指すことになりました。また町の産業に携わる3課は365日や休まない役所を作ろうとしました。職員さんは交代勤務で土曜日曜、祝日も役所を開けています。産業振興のため土日閉庁しているようでは観光産業につながりません。そのため観光客の多い土日曜日も役所を開けることにしました。産業3課は攻めの部隊となっています。
そして職場は、役所内から切り離され、島で一番人が交流するフェリー乗り場に設置しました。参考までに鉄道も飛行機も民間バスも無い海士町ですから、人の交わる拠点はフェリー乗り場となっています。
海士デパートメントストアープランにより島の特産品を製品化することに着手しました。それが「さざえカレー」、「いわがき春香」、「隠岐牛」、「海士乃塩」、「干ナマコ」などです。例えば「さざえカレー」は海士町では当たり前のカレーですが、町以外では食べられていないことに気付き商品化したものです。それがヒットして一番バッターのような役割を果してくれました。そこから二番に「いわがき春香」を生み出し、続いて「隠岐牛」へとつながっていったのです。
このようなアイデアは町役場と民間事業者が協働して取り組んでいます。基本形は町役場が施設や工場など必要な建物を建設します。運営は民間事業者が請け負います。両者がブランド作りと販路開拓を行い、作り出した製品は東京市場を初めとする大都市に送り出しています。
これらのビジネス展開ができているのは山内町長だからできていると感じました。リーダーによって意識も変わるし行動も変わります。極めて民間意識が高い町長はお金を生み出すための投資を行います。将来外貨を稼ぐと思うアイデアの商品化には財政を投資する姿勢を持っています。必ず成功するとは分からないのでリスクはありますが、それでも将来へ投資をする姿勢を持っています。
それを実行できるのは、このままでは財政再建団体に陥るという危機感、公共事業に頼らないで自立するまちづくりを目指していること。そして島の外からの外貨を稼がないことには町が成り立たないので、若い人達に島の資源を活用してお金を稼ぐ方法を身に付けて欲しいと思っているからです。
山内町長と懇談できたことは奇跡が訪れたような時間でした。「こんな凄いリーダーが日本にはいるんだ」と思わざるを得ません。山内町長のファンになったことから、海士町ブランドの商品を購入したのは言うまでもありません。公務でお忙しい中、3時間以上も時間を確保してくたれことに感謝しています。