杵屋栄七珠の会主宰の新春のお弾き初めに参加しました。毎年、この時期に開催しているもので、春の到来を感じることができる演奏会です。
冒頭、挨拶をさせていただきました。
新春おめでとうございます。本年が皆さんにとって素晴らしい年になることを祈っています。さて今年も杵屋栄七珠の会の新春のお弾き初めに参加できたことに感謝しています。こうして皆さんと一緒に演奏を聴けることを楽しみにしていました。今日、知人と午後からお三味線の演奏会に行くという話をしていました。「日本の春を感じる演奏会ですね。とても素敵な機会がありますね」と話してくれました。この話にあるように、新春に長唄とお三味線の演奏会に参加できることは、とても贅沢な時間を過ごせることだと思います。
参加していると気付かないけれど、新春の演奏会に参加できることは素敵な時間を過ごせているということですから、この場にいられることに感謝しています。日本の伝統文化に触れられることは、心に豊かさを感じることです。そしていつも思うことですがこのお弾き初めでお三味線の音色を聴くと、春が近づいていることを感じます。冬真っ只中ですが、足音を潜めて春が訪れようとしているような気持ちになります。
今日の演奏会で、皆さんと一緒に近づいてくる春を楽しみたいと思います。最後まで楽しく過ごせることを期待しています。
以上のような挨拶をさせていただきました。演奏会は「ことぶき」、「松の緑」など、新春を感じさせる曲目から始まりました。圧巻は長唄とお三味線を組み合わせた「娘七種」です。この長唄と演奏ができる技術に感動しました。迫力と聴いている心地良さは圧巻で、冬から一気に春になったように感じられました。姿なき季節を感じさせてくれる日本伝統はやはり素晴らしいと感じました。
もうひとつ楽しかったことがあります。ダイワロイネットホテル和歌山の部屋が演奏会場だったことから幕がありませんでした。そのため、本番の音合わせなどの練習の風景が目前で繰り広げられたのです。本番の演奏は素晴らしいのですが、お互いの連携や音合わせなどの舞台裏を拝見できたことも、結果として楽しい設定でした。
音を合わせていく過程や息を合わせる光景を見ることは、とても興味深く、演奏はチーム力が重なり合って質の高いものに仕上がることが分かりました。
また練習の途中、とても関心を持ったアナウンスがありました。演奏会に向けてお三味線の稽古を続けてきました。稽古では本番で披露する曲目を繰り返します。何度も何度も繰り返すのですが、そこでその時点で最高のレベルの演奏にまで高めます。稽古でできることが本番でできるとは限らないので、失敗のないようにレベルを高めて行きます。
それでも緊張する本番では稽古と同じレベルで演奏できないことがあります。でも稽古でできないことを本番でできることは絶対にありません。陸上走り高跳びの練習において、跳べない高さを試合で跳べることはないのと同じです。練習でできるこことだけが試合でできる可能性があるということです。その可能性を限りなく高めるために何度も練習で繰り返し行っているのです。
今日の演奏会では稽古の厳しさと意味、そして本番で日本文化の素晴らしさと楽しさを味わうことができました。
寒さ厳しい一日でしたが、その中に春の足音がかすかに聞こえてくるような気がしました。これから訪れることに期待できるような、新春のお弾き初めとなりました。春の到来は、これから先に期待があることを感じられるのかも知れません。