活動報告・レポート
2013年2月2日(土)
経済論議

夕方から複数の経営者、為替の専門家を始めとする皆さんと経済見通しについて議論しました。アベノミクスに関しては、そのアナウンス効果として円安と株価高に振れていることからは好意的に迎えられています。何が好感を持たれているのか分からないので、これから先の円の動きは全く分からないという評価があります。

インフレ目標の2パーセントはバブル期でも達成できなかった数値であり、そのためには通貨発行高を上方修正する必要があるというものです。ただしここで消費税が邪魔になります。5パーセントから10パーセントに消費税が上がることになれば、合計7パーセント物価上昇することになります。額面で7パーセントですが、実際は約10パーセントの負担増を実感することになります。

ここでも問題は所得がそれに伴い上昇しているかどうかです。物価が10パーセント上昇することに伴い所得も10パーセント上昇させる必要があります。それができなければ不況下の物価上昇という歓迎すべきでない事態に陥ります。1980年代のレーガンのアメリカが陥ったスタグフレーションの状態に日本も陥ることになるのです。懐かしいスタグフレーションが日本で蘇える。そんな事態は招きたくありません。物価が上昇しているのに所得が上がらないので生活が苦しくなる。特に年金生活の場合は今以上に厳しくなります。お金の価値が10パーセントも切り下がるのですから、可処分所得が減少することになります。

もうひとつが円安に振れていることで、エネルギーコストが上昇していることがあります。ガソリンや灯油価格が上昇していることから北海道や東北などの地域のエネルギーコスト負担は増えていますし、それが将来の生活を直撃することになります。

円安に振れるとエネルギー需給率4パーセントのわが国の生活ベースが上昇することになります。即ち、電気代、ガソリン代などの光熱費の負担が増えることになり、しかもこれ以上削減が厳しいところまで来ていることから削減の余地が少なくなっていることが問題です。

円高が30年以上も続いてきた中、初めての円安経済になっている状況があり、これから更に円安に向かうのか、それとも円安は一時的なもので再び円高に向かうのか、意見が分かれています。正確には、意見が分かれていると言っても大方は為替への政治介入によって円安傾向に向かうという見方をしています。これから2年位で1ドル110円前後まで円安に向かうというのが一般的見解だと伺いました。そこで市場の揉み合いがあり更に円安に向かうのではないかということも付け加えておきます。

もう一方は、円安は一時的なものに過ぎないので、市場の自由な意思に基づいて円安が反転して円高に向かうという意見です。これはドルと円との関係から分析しているものです。アメリカの人口は約3億人。これから移民が流入していくので更に約2億人は増加するという見込みがあります。この予測に基づくと近い将来の人口は5億人になります。

3億人の経済規模から5億人の経済規模に拡大した市場はどうなるのか。それはドル発行高がこれからも増えるということです。人口が増加するのに併せて市場は拡大していきます。市場が拡大するということはそれを支える通貨を増やさなければならないということです。ドルの発行高はまだまだ増えると予測されるので、円の価値は上昇することになります。ドル発行増に追いつくためには、将来とも円の発行高をもっと増やす必要があります。そんなことをすれば日本の信用力はなくなりますから国債暴落へとつながります。

つまり将来ともドルの発行高が多く、ドルと比較すると円の発行高は少ないということです。日本の将来人口予測は7,000万人ですから国内市場は減少していきます。人口も市場も減少していくのに円だけを増やす金融政策を取ることはあり得ません。

即ち円高に向かう方向性は不偏だというものです。日銀介入の甲斐もなく、当面は1ドル80円程度に落ち着き、将来は1ドル50円程度まで円高が進むという意見があります。

さて為替がどの方向に向かうのかは現時点では見通せません。今までの金融の動きと全く違うため、先が読めないという現状です。

ただ言えることは政府と日銀が共同で2パーセントのインフレの声明を発したことによる金融緩和は世界で類を見ないという政策であるということです。中央銀行の独立性を破壊するのは世界で初めてのことなので、アベノミクスはわが国を大いなる経済実験の場に突入させているということです。見通しが立たないというのは、経済理論の枠を超えていることを指しています。市場に任せての円安の動きではなく政治的な動きで円安に振れていることに危うさを感じるという意見もあるのです。現在の円安は経済理論で動いているのではなくて政治によって動かされていることから、どう動くが分からないのです。

経済理論は過去の経験からパッケージとしてある程度確立されています。ある経済政策の部分だけを抜き出してそのとおりに動くものではないのです。

そして本当は一番怖い部分が隠されていますが、現時点でこのことを発言している人がいないのです。ある水準以上に円安に振れてしまうと、金融政策で止められないということです。円安の進行に歯止めが掛けられなくなるので円安が止まらなくなるのです。その水準は1ドル約125円かも知れないと話してくれる専門家もいます。

行き過ぎた円高を解消させるためには、中央銀行として円を市場に流出させる金融政策を取れますから自国で対応が可能です。

ところが円安に歯止めを掛けようとすればわが国がドルを買い続けなければならないのです。ドルはアメリカ通貨ですから日本がコントロールできるものではありません。つまり円安は自国でコントロールできないのです。この怖さがあるのです。

もうひとつがアベノミクスが成功したら円安になり、失敗しても円安になるので結果が判らない政策であるということです。アベノミクスが失敗すればわが国が金融不安を抱えることになり円売りが始まります。円買いの市場介入をしたとしても、太刀打ちできる売りではありませんからどこまでも円安に振れていく事態になります。これは恐ろしいことになります。

さて円安なのか円高なのか。日本経済がどちらに向かうか分かりませんが、少し先のことを考えて自己防衛を行うことが求められそうです。

経済は近視眼的ではなく歴史から学び、そして地形学的観点も持ち合わせる必要があるのです。小手先の経済対策から、これからの経済の動きは読み取ることはできないのです。

如何に学ぶことが大事なことかを知ることができました。優れた経営者や為替専門家の皆さんから学べる環境にあることは恵まれたことであり、この環境にとても感謝しています。約3時間の経済議論は今もこれからも役立つものになりました。