新しい年が始まって二日目となり、今日も穏やかな日が続いています。かなりゆったりとした一日を過ごすことができました。
お会いした電機メーカーの人との話しです。大手電機メーカーの中には業績悪化で平成24年に雇用調整を実行しているところがあります。3,000人だとか、8,000人だとかの雇用調整が図られたと聞いていますが、退職した人達の人生や家庭を思うと、もっと方法がなかったのだろうかと思う気持ちになります。
ところでこれらのメーカーの技術者の下には、韓国企業などから誘いが来ていると聞きました。しかも年収はこれまでの二倍以上の数字を提示されている人もいるようで、退職前または希望退職に応じた元従業員の中には、韓国行きを決意した人もいるようです。決意する理由は理解できます。
自分の技術を買ってくれる企業があれば、そこでもう一度実力を試したいと思う気持ちがあること。技術者としての誇りを保つため。そして日本にいる時よりも高い年収を得られることからやりがいを感じられること。そんな気持ちになるのは当然です。
捨てる神があれば拾う神ある。そんな諺が浮かんできます。最後に笑うのは人を大切にする企業だと思います。会社の技術力とは技術者が保有しているものです。会社の信頼とは従業員が保っているものです。従業員が会社の技術であり品質であり、そして信頼そのものなのです。ロゴや経営者だけが技術力や信頼ではないのです。勿論、特許や企業文化や歴史の力は大きいのですが、そんなものは今日以前の過去のものです。これからの企業を支えるのは新しい技術であり、今の時代を生き抜くための信頼です。それらを実行しているのは現役の従業員であることは間違いありません。そんな人財ともいえる人材を退職させてしまってはこれからの技術力も信頼力も保持することはできません。直ちにそれらの評価が低下することはないと思いますが、中長期的視野で捉えると、人が離れると技術も信頼も低下していくことになります。
韓国の電機メーカーが国際市場において強いのは、国と一体となった海外戦略や決断のスピードや取り扱う規模なども要因ですが、かつて日本が世界一を誇っていた技術力やブランド力を身に付けていることも大きな要因です。その技術力の基礎を築いているのは、もしかしたに日本人だったかも知れないのです。そしてこれから誕生する新しい技術も日本の技術者が取り組んだ韓国企業発のものになるかも知れません。
いつの時代になっても企業は人です。人を大事にする企業が伸びるのは当然のことで、利益と人材を天秤に掛けるようでは将来も厳しいものがあります。人材を他の経費と同じように人件費と思っている経営をしていると、企業はステークホルダーとしての人から愛されなくなります。人は人件費にだけ分類される存在ではなくて、信頼や技術などブランド力や知的財産など無形の評価も含まれた存在なのです。
既に現役を退いた人からも、「昔から窓際に配置したり、リストラすることはありました」と話してくれましたが、日本が技術力でもブランド力でも世界一の存在であったから影響は少なかったのです。今は世界の市場がどの時代よりもひとつになっています。グローバル化の時代において、技術者や人材を退職させることは人材の海外移転につながります。今も日本の強みが流失しているのです。
日本人としては、人を大切にする企業が繁栄し、人を大切にする国であって欲しいものです。
実家に戻り父親の様子を伺ってきました。一般病棟に移ってから、幸いなことに調子が良くなっています。今日も病室で大きな声で話していたことを聞き安心しました。ただ過去と現在が入り乱れた話しになり、話の筋が通っていなかったようですが、黙り込んでしまうよりは良しと思います。
順調に治療が進んだとしても退院まではもう少し時間がありますから、これからのことを考えたいと思っています。