3Sのことは誰でも知っていることです。整理、整頓、清掃が3S と呼ばれています。
社会や会社で呪文のように言われていますが、気持ちを込めて実践している人は少ないと思います。それは3Sの効果を体感していないからです。
会社組織を立て直しの請負人がいます。現在、ある会社に入り込んで体質改善を図っている最中です。そこで面白い方法を採用しています。朝礼を終えた後、清掃の時間を採っています。従来の清掃の時間は15分だったのです。15分だったら毎日、同じ個所を形だけ清掃しているようなものだったようです。ところが30分になると同じ動作を繰り返していたり、毎日同じ机の上だけを拭き掃除をしていたら時間が持たなくなるのです。
そうすると面白いことが起こります。机の上の清掃だけではなくて、机の下もきれいにしようとします。その次の日は、机の隅や通常であれば気の届かない場所まで清掃しようとするようになります。きれいにすればする程、より見えない場所まで清掃しようとする気持ちになるのです。そうすると職場に連帯感が生まれます。毎朝、同じ目的を持った人同士が一緒に仕事をするのですから、仕事も協力し始めるのです。
朝の清掃が協力関係を持つことになり、仕事の成果を高めてくれるのです。バラバラの職場が一体感を持てるように変化しているようです。
但し、最低三か月は続けなければ定着しないそうです。三か月継続することで新しい文化として定着してくるのです。そうすると請負人が毎朝、清掃を率先垂範しなくても自主的に職場の人が清掃するようになるのです。そうなると請負人は最初の仕事を終えることになります。そこから仕事のしくみの改善に入れるのです。環境をきれいにすることで効率が高まることを実感し、協調体制が生み出された職場は改善に入りやすいのです。
整理、整頓、清掃を毎日実行することの威力を感じました。そして3Sの効果を実感するためには短時間では駄目で、「そんなに長い時間も清掃するの?」と思えるような時間設定が必要です。簡単に終えられる時間ではなくて、少し考えるための時間設定にすることが効果的なのです。
同じような事例があります。あるメーカーの製品は、白色を基調にしているそうです。その製品は工場で使用する機械ですから、本来は汚れが目立たない色にすべきなのですが、敢えて白を基調にしているのです。そこには理由があります。白色にしておくと、毎日稼働させていると、どうしても汚れが目立ってきます。人は自分の仕事に関係する機械に汚れが目立ってくると、清掃しようとする気持ちが働きます。つまり毎日、機械を動かしたあとに自然に清掃するようになるようなのです。
つまり清掃するなど愛着を持って機械に接することで、その機械は長持ちするのです。白色に仕上げられた機械は、ダーク系の色で仕上げられた機械よりも長持ちをするのです。
ここでも清掃の威力が感じます。簡単に思って見過ごしている3Sですが、真剣に取り組めば仕事の成果は上がりますし、製品の寿命も延びるのです。