和歌山内の素晴らしい経営者と懇談する時間がありました。約2時間の懇談でしたが、遠くの有名どころの経営者の話を聞くよりも、ずっと価値のあるものでした。起業してから15年を迎えている会社は、厳しい経済情勢の中においても業績を伸ばしています。その秘密も垣間見ることができました。厳しい時代を、人材を育成することによって乗り切ろうとしています。
この会社のU社長は28歳で起業しています。元々営業を専門としていたため、今も営業分野は得意です。1年ほど前までは社長兼第一戦の営業も行っていましたが、最近は従業員さんに営業を任せてこの先の企業展開を企画することに専念しています。
自らの経験から、営業は話が得意な人よりも聞き上手の人の方が成績を挙げられると聞きました。人の話を聞ける人は、得意な話を話しまくる人よりも上位にあると評価しているようです。理由は簡単です。相手の要望を聞いて対応することが営業の基本だからです。
自分の得意な話をしても、それを相手が望んでいないかも知れませんし、聞くだけ時間の無駄だと思っているかも知れないのです。相手の幸せを考えるのではあれば、まず相手の欲することを汲み取ることが大切です。そこから営業は始まるのです。
そしてそんな従業員を家族のように大切に思っていることが分かります。最近はお客様満足度、CSを重点に掲げている会社が多いのですが、この会社ではESを第一に考えています。ESとは従業員満足度のことですが、まず従業員が自ら所属する会社に満足しなければ、自社製品をお客さまに勧めることはできません。会社の役割は会社で得た利益の内、会社の成長に必要な原資を残した後は、全て従業員に分配することだと聞きました。そこには成果に基づいた査定が加わりますが、基本は自分達で得た利益は自分達で納得できる形で配分することです。
満足できるとは家庭を維持でき、銀行の住宅ローンを組んでも、将来の返済に不安がないことなどが挙げられます。この会社で仕事をしていると将来も希望が持てることが従業員の満足なのです。給与の支給が遅れることや、経営者が理由を付けて支払を遅らせることがあれば従業員の帰属意識は低下し、「会社のために」の思いは消え去ります。
仕事をして会社に貢献した分は賃金として正当に反映され、支払い期日に支払われることが満足なのです。それを大切にしている会社ですから、従業員の満足度は高くなっています。
例えば大企業や公務員として就職した人は、余程のことがない限り数年で辞めることはしないのが通常です。その組織に帰属している方が将来に期待が持てるからです。この会社が就職希望者に話しているのは、「この会社は小さいけれども、大企業に就職する時の気持ちのように、ここはこの分野で一番の会社だから定年まで居続ける」ような気持ちを持って欲しいということです。会社にいられるためには条件があります。上司に意見を言える空気があること。意見を提言すると衝突することがありますが、部下は意見を言う前に上司と絆を築いておく必要があります。人間関係ができて初めて意見を言い合えるのです。人間関係のない内に、例え正しい意見であっても強く言うと、衝突して煙たく思われます。その結果、職場はギクシャクしますし、会社としての成果を挙げることはできません。
まず人間関係から入ることが絶対的な基本です。
熱い経営哲学に接したことは凄い勉強になりました。有名とされる人の講演会を聞くよりも、遥かに得るものがありました。身近な人の中に尊敬に値する人がいることは力になります。