730 .リスク管理
 私達は100%を目指した取り組みをすることがあります。ここでおもしろい話を伺いました。ある会社で、「この施策を行うとすれば95%の確率です」と部下が上司に報告したところ、リスク管理の考え方を知らない上司は「あと5%頑張れば100%になるのだから、あと5%の改善を目指すべきだろう」と答えたそうです。

 リスク管理の考え方を知らない上司だけではなく、やるからには成功確率100%を目指そうと頑張る人は多いようです。しかし100%を目指そうとすると精神的に苦しくなることがあります。完璧は完璧な準備が必要だと思うからです。試験でも80%を目指せば合格するラインに届どくのに100点を取ろうとするから、細かな部分まで入り込み過ぎるのです。

 ところで「あと5%頑張れば100%になる」のどこが間違っているのでしょうか。リスクに100%対応するということは、何もしないことと一緒になるのです。そうリスクに100%対応しようとすれば、何も行動を起こさなければ良いのです。家で寝ていればリスクを回避できます。試験に落ちないようにするには受験しなければ良いのです。営業に失敗しようとしなければお客さんを訪問しなければ良いのです。そうするとリスクは100%避けられます。

 しかしリスクを避けるために行動しなければ目前のリスクは回避できますが、長期的には何も解決されないことや自分の意思を実現できないことに気付きます。つまり自分の先のことは自分も誰にも判りませんから、100%の確率で成功に向かう道はないのです。将来予測に100%はあり得ませんから、現実社会では100%はあり得ないリスクを取る覚悟で決断と行動をすべきものなのです。

 そう思えると気が楽になります。100%になるまで行動を起こさない人がいます。確かに失敗はない代わりに飛躍もありません。そのうち、そのうちと思っている間に年月は経過し、行動を起こさないまま年齢を重ねていきます。リスクを避けていると、結局、夢で描いたような自己実現はできないのです。
 勿論、リスクを起こさなくても社会生活ができているということは安定している証拠ですから、決して悪いことではないのです。

 ただ人は現状の中だけで生きてはいけないものなのです。どれだけ安定していても、それ以上を目指そうとする気持ちが芽生えている筈です。それがなければ個人の向上はありませんし社会の発展もありません。生きている一人ひとりが社会の発展を何らかの形で支えているからです。一人が怠けるとその分、社会の発展はその一人の分だけ天の意志から遅れるのです。それは大きな流れからすると微々たるものですから、誰も気づかないものですが。

 リスクを100%避けてから行動しようだとか、リスクを100%除外することができてから、やりたいことに挑戦しようと考えることは、結局は何もしないことを選択することになるのです。夢とはリスクがあっても立ち向かうことですから、100%安全な挑戦は決してないし訪れないものです。リスクがあるけれども挑戦する。このことだけが将来を切り拓く方法なのです。リスク管理に100%はないことを知っておきたいものです。

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