和歌山市片男波の八の字公園に、和歌山県で一番きれいと評判の公衆トイレがあります。この公衆トイレが完成して以降の7年間、地元片男波自治会がトイレ掃除を行っています。一年365日、一日も欠かさないで、自治会の皆さんが当番制でトイレ掃除を実施しているのです。大みそかから元旦まで一日も欠かさないで自治会組織が公衆トイレを掃除していることを、私は聞いたことがありません。
地元の公のものに対する意識レベルが地域のレベルの高さを表しているようです。きれいな場所は、いつもきれいな状態ですし、汚れた場所は常に汚れた状態にあることが多いのです。和歌山県で一番うつくしい公衆トイレの評判から、県職員さんが聞き取りに来ている程です。
見えない心を映し出す鏡はその人の周囲にある物たちです。トイレがきれいに保たれていることは、そのトイレを管理している皆さんの心がきれいな証拠です。見えない心を見る方法は、その人の衣装や周辺の道具を見ることです。鏡に映し出されないものでも、周囲の小道具類が心を映し出してくれます。
また片男波自治会では公園内には、「美が美をつくり美を守る」の立て看板を設置しています。この立札を設置したのは理由があります。公園内に咲いている花が何者かによって持ち去られることが絶えなかったからです。自治会の費用で花を購入して植えて管理していますから、これは明らかに窃盗です。平成17年には18鉢の花が盗まれました。平成18年は14鉢窃盗の被害にあいましたが、先の立札と「花泥棒、盗んだ花を見れますか」の立札を設置したところ、平成19年は4鉢、平成20年の今日までの窃盗被害はゼロになっています。立札の言葉が窃盗を防いでくれているのです。美しく公園管理をしていると美しい公園になりますし、美しい環境が継続します。
汚れた心の持ち主の行動を防ぐのは汚れではなくて美しい心なのです。美しい心に照らされた汚れた心が浄化されるのが普通です。きれいな花檀ときれいな公園のトイレが地域の皆さんの心をよりきれいに磨いてくれるようです。
美しい地域には美しい心の持ち主が暮らし犯罪は起こりません。美しい心の光で照らされた地域は美しい環境にあります。公衆のものの姿を見ると地域のレベルが分かるというのは本当です。
和歌山県で一番きれいな公衆トイレを見に行きましたが、外観も中も見事でした。きれいなトイレは使用する人の心もきれいにしてくれるような気持ちになりました。
ところで県の公園のトイレの掃除は、規定によると一週間に一度となっているそうです。
一時期、この公園管理者が地元自治会に対して、県の規定に基づいた掃除をすれば良いとして公園のトイレ掃除を仕事として捉え、入札することを考えた節があります。毎日掃除をして磨き上げた公衆トイレが、もし一週間に一度の掃除に変更なったとしたら、忽ち和歌山県で「一番きれいな」という形容詞が剥がされてしまうと思います。地元の皆さんが掃除してくれているからこそ、高い自治会のレベルに応じてきれいに保たれているのです。単に仕事として管理するのであれば、このトイレは今のきれいさを保つことは出来ないと思います。高い仕事のレベルで公衆トイレを掃除するよりも、高い地域レベルで公衆トイレ掃除をする方が、よりきれいに保たれると思います。
参考までに、地元自治会と共に、土曜日は地元子ども会が掃除を担当し、水曜日は地元保育所が掃除を担当してくれています。地域が一体となって地域レベルを上げるための取り組みをしているのです。
公衆や公共物は、その地域のレベルと同等のきれいさを映し出してくれるからです。
そして7年間の掃除の記録が残っています。毎日管理している○印や△印を積み重ねたノートは、それだけで価値がある地域の宝です。
「市内で一番きれいな公衆トイレは片男波公園のこのトイレです」。「営業で市内を回っていますが、少し我慢してでもこのトイレに来ています」などの意見があります。これらは尤もな声です。
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