651.洗面所の話
 ある経営者Sさんの話を伺いました。ある方が昨日、一緒に視察に出掛けたそうです。一日一緒にいて気付きがあったと聞きました。休憩時間にホテルのトイレに入った時、一緒に行ったSさんも先にトイレにいたそうです。手洗いをしていた時に何気なく隣のSさんを見たのです。そこで信じられない風景を見たのです。Sさんが手洗いを終えた後、バックからティッシュペーパーを取り出して水飛沫を拭きとっていたそうです。それも自分が飛び散らした水滴だけではなく、隣の洗面の汚れも拭き取っていたのです。

 公共のものを大切にする気持ちが表れていますが、心の底には感謝の気持ちを持っているから出来ることです。それはその時初めて実行しているのではなくて、長年誰に見られなくても実行していた行為だと思います。

 物事に感謝する気持ちを持っていることが、その企業が発展している要因のひとつだと思います。会社が小さい頃から、お客さんや周囲の皆さんに感謝する気持ちを持っていたことが分かります。Sさんの感謝の気持ちが周囲に伝わり、周囲の評価が会社を大きくしていったのです。
 長年に亘って毎日続けてきたこの行為は素晴らしいものです。感謝の気持ちを積み重ねている人とそうでない人の差が、将来の会社の発展の差につながるように感じます。

 洗面所をきれいにする行為。気付いている人は少ないと思います。気付いても実行している人はもっと少ないと思います。気付いて実行している人が他の人よりも大きくなっているのは当然のことかも知れません。

 もうひとつの事例です。イベントで紙コップを使用する場合があります。通常、コーヒーなどをイベントに来てくれたお客さんに提供した後は、ごみ袋に無造作に捨てています。
 ところがSさんは違います。他人の飲んだ後の紙コップをゴミ袋から取り出して、紙コップを重ねてごみ袋に戻していたそうです。紙コップを重ねて捨てると、ごみの容量が少なくて済みます。イベントの最中にこのことに気付く人は少ないと思いますし、気付いても実行できる人はもっと少ないと思います。他人の飲んだ後の紙コップをゴミ袋から取り出して素手で触って仕分けできる行為は簡単ではありません。まして成功している経営者がごみ袋に手を突っ込むことは簡単ではありません。

 これも感謝の気持ちと、地球環境問題への取り組みの中で自ら実践できること実行している証拠です。恐らく、誰が見ていない場面でも同様の行動をしている筈です。日頃実施していない行動は急に出来るものではありません。感謝する気持ちの積み重ねが、長い年月の中でこの世で開花するのです。

 誰かが感謝する気持ちを持った行動をしていることを聞くと自分も得をしたような気持ちになり、それ以降の気分は良くなります。行動している人は素晴らしい人ですし、それらの行為を見て素晴らしいと感じられる人もまた素晴らしいと思います。そしてそれを伝える人もまた素晴らしいのです。素晴らしい行為の循環が素晴らしい社会を築いているのです。その循環の輪の中に入りたいものです。

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