まちの形成に関して不動産事業を営んでいる経営者から興味深い話を伺いました。まちは幾つかの姿に分かれているというものです。つまり地域は住む人によって顔を変えるのです。
例えば土地価格が5,000万円から6,000万円もする高い地域があります。住居用としてそれらの不動産を購入する人は、当然のこと年収が高い人達です。この不動産事業者によると、医師や弁護士、会社経営者が主な購買層だそうで、その住宅は安定して平穏な雰囲気になっているそうです。土地がまちを形成するのではなくて、住む人がそのまちの雰囲気や品格を作っていることが分かります。
何も医者や弁護士、社長業が偉いからと言っている訳ではありません。高い年収を得ているのは、それだけ他人のお役に立っている結果であり、仕事を通じて地域社会貢献しているからなのです。それが嘘だと思うのであれば、まちからそれらの職業の人がいなくなったことを想像すると分かりやすくなります。
このまちから医者が一人もいなくなったとします。医者がいないまちに人は住むことを選択するでしょうか。医者が一人もいない無医村地域が問題になっていますが、医者はそこに暮らしている私達の健康面での安心を提供してくれているのです。
もし弁護士の存在しないまちに暮らしているとすれば。民事上の問題が起きても法律のプロに相談することはできません。交通事故に巻き込まれた時や、悪徳商法にひっかかった時などどうなるのでしょうか。弁護士のいないまちに悪徳商法が入り易くなっているとも聞くことがあります。弁護士はまちの安全を保ってくれる安全装置の役割と、いざと言う時に助けてくれる存在でもあるのです。
もし儲かっている会社経営者が地域にいないとしたら。高所得者は税金をたくさん支払ってくれています。その税金は福祉や教育などに活用されていますから、ある意味、私達の市民生活の一部を支えてくれているのです。小さな地方自治体に利益を弾き出している大きな会社が存在してくれていることで、その地方自治体の市民が支払う市民税は、この県内の他の地方自治体よりも安いと聞いています。儲かっている会社の社長が、このまちにいてくれることは地域にとって大きなメリットなのです。
一般的には住居用の不動産が、人生で一番高い買い物であると言われています。一番高い買い物ですから、より良いもの、治安と環境が良いところ、そして価値観が近い人たちの住む地域を選択します。住宅を選択する基準は他の商品とは異なり、単に価格で購入するのではなくて、どんな人が住んでいるのか、通学できる学校、つまり校区の問題なども重要視されています。
如何でしょうか。まちに値段の近い土地があることは、それを購入する人が存在していることを表し、そのことがまちの品格を高めてくれているのです。ここで暮らしている私達が地域の価値を高めることで、土地の価格は上昇しまちの品格は高まります。
妬みや嫉妬からは良いものは誕生しません。高い価値観と品格から良いものが生まれます。まちの姿は私達の心を端的に表してくれています。
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