平成21年4月、関西独立リーグが開幕します。和歌山県の球団「
紀州レンジャーズ」の参画が決定していますし、平成20年6月には、株式会社とNPO法人の設立も終えて準備が整い始めています。関西独立リーグは和歌山県、大阪府、滋賀県に各1チーム、兵庫県の2チームの合計5チームで構成し、年間約80試合のリーグ戦方式でリーグ優勝を競い合います。プロ野球チームが存在し、野球の盛んな関西で初めての独立リーグですから、先発している四国九州独立リーグや北信越リーグとは異なったスタイルになりそうです。
近い内に、独立リーグに所属するチームは約20チームになると予想されているように、地域活性化のために野球は有効な競技だとされています。
関西独立リーグの最高顧問の石毛宏典さんによると、独立リーグが地域に出来ることの経済波及効果は約15億円から20億円だそうです。四国や北信越にこれだけの経済波及効果があることは、ない状況と比較して確実に経済活動の底上げを図ってくれています。加えて、どこの府県や地域でも観光で集客を図り地域振興につなげようとしていますが、観光の掛け声だけでは集客することは出来ませんし競合地域が全国の地域ですから、観光で人集めは容易ではありません。
そこで地域に独立リーグのチームが存在し、年間約40試合をホームゲームとして所在地で試合をすることの集客効果は、他の地域よりも優位に立つことになります。そして休日に家族や友人と、地元の野球場で野球観戦をする楽しみが新たに加わることになります。今までになかった娯楽がひとつ増えることになるのです。
独立リーグのチームは県代表チームのような位置づけになり、ノンプロの夏の都市対抗戦のように、各地に誕生した独立リーグで、自分達の県のチームが競い合う状況に発展して欲しいと願っています。
そして独立リーグの大きなテーマは、地域振興と共に青少年育成があります。野球を通じて青少年の健全育成に関わることです。独立リーグのシーズンは4月から10月までですから、11月から2月までの四ヶ月はオフシーズンとなり、選手は地域に入って少年野球の指導や社会貢献活動を行うことになります。地域の産業に関わってその地域を知ることもその一環で、和歌山県での農業体験やサービス業の体験を行います。厳しいことですが、野球で食べていける選手は少ないのが現実ですから、折角、ご縁があって和歌山県のチームに所属したのですから、選手を引退した後も、和歌山県を好きになってもらい、地元で仕事をしてもらいたいこともあります。
参考までに四国独立リーグでは発足以来一件も不祥事がなく、健全な地域づくりにも資しています。野球をしているお兄さんが、グラウンドで野球少年を教えている光景が地域にあると嬉しくなります。
このようにスポーツは青少年の育成につながります。将来は紀州レンジャーズ組織の下部組織にジュニアチームを作り、ここから紀州レンジャーズやプロ野球に進む選手が誕生してくれると地域として良い循環になります。そして遠い将来ですが、紀州レンジャーズのジュニアチームで育って日本プロ野球に進み、現役を引退した選手が再び和歌山県に戻ってきて、今度は指導者として紀州レンジャーズに所属して欲しいと思います。それが地域振興に関わり、地域文化として定着することなのです。
そして最後に、独立リーグは選手の夢を叶えてくれる場所でもあり、方向転換の場にもなります。野球が好きでも生涯、野球に関わっていける選手は極めて少ないのです。そこで最後にプロ野球への夢を掛けて挑戦する場所が独立リーグなのです。一年独立リーグで過ごしても次の年も選手として所属できるとは限りません。技術が伴わなくてチームを去る選手も出てくると思います。残念なことですが野球を諦めて違う人生を歩むための決断を下させるのが独立リーグでもあるのです。
セレクションを潜り抜けて独立リーグでプレイした選手は、野球人として、ある水準以上のレベルにあり、社会人としても認められた選手たちです。そして独立リーグというプロで技術も精神力も鍛えられた選手たちですから、野球から方向転換しても必ず成功する素養があるのです。厳しいようですが、野球から別の道に進むためのリーグでもあるのです。最後に好きな野球で人生に挑戦したと言える何かを与え、別の道を目指し、そこで人生の勝利者になって欲しいと願うのが独立リーグなのです。
関係する人が地域のために何かを目指すのが独立リーグで、関わっている人と地域の挑戦が独立リーグだといえます。
地域活性化と青少年育成。夢をかなえる場所、そして方向転換の場所が独立リーグの舞台なのです。厳しいこともありますが、地域に存在してくれることが地域の元気になり、地域の力を底上げしてくれる役割も果たしてくれると確信しています。