和歌山県のフラメンコの第一人者が森久美子さんです。県内外で主宰されている教室では年齢に関係なく多くの生徒が学んでいます。本格的に習うコースや趣味として体を動かすコースなどがありますし、ゆるやかなフラメンココースも用意されています。残念ながら私はフラメンコを観たことがありませんが、プロのダンサーの舞台では激しい動きと音が体感出来るようです。ライブではダンサーの踊りから発する音を体感することが出来るそうです。観客をハッとさせることや驚かせてくれるのです。
ところが森さん曰く「本場スペインのダンスは肉食主体の西洋文化が基本となっているので表現が激しく、日本人には真似できないし感性も違うので、同じ表現は無理」だと言います。民族や文化が違うと同じダンスを学んでも同じものにはならないのです。もっと言えば、日本人がどれだけ練習を重ねても本場のフラメンコに追い付けないのです。でも踊りは百人居れば百通りの踊りがありますから、ひとつの本物を追い掛けなくても良いのです。
森さんは、「私のフラメンコはこれですと言えますから、世界中どこででも私のフラメンコを踊れます」と言い切ります。森さんは長い時間をかけてオリジナルのフラメンコを創り上げて来ました。日本文化とスペインの文化を融合させた新しい森さんだけのフラメンコ。オリエンタルフラメンコとも言えますし、和洋折衷のフラメンコとも表現出来そうです。
激しい感情を表現するのではなく、内に秘めた感情や静かな動きを表現するのが森さんのフラメンコであるような気がします。そして和歌山県発の日本的フラメンコを世界に逆発信させることを目標にしているのです。今の森さんは、この目標を追いかけ続けているのです。
かつて東京を拠点として全国の舞台でフラメンコの舞台に立っていた時、当時のスタッフからは「和歌山から来ましたと言わないように」と忠告されたそうです。理由は、文化では東京が地方よりも一段上だと思われていたからです。当時は「そうなのかなぁ」と思って従っていたのですが、今の思いは全く違います。東京ブランドを背景にするのではなくて、和歌山から全国に発信出来ることが本物だと思っているからです。地方から文化を発信することでその地方も認められるのです。地方とは人であり文化なのです。決して地形や置かれた環境ではないのです。人が地方を輝かせますし、逆に沈ませることになるのです。人こそが地方なのです。人材が活躍出来る地域、人材が輝く地域、人材が潰されずに応援してくれる地域、そんな地方に人が集まるのです。地方は生き残りをかけて様々な施策を講じようとしていますが、もっと単純に、人が日常生活において生き生きと輝ける地域を創ることが地域活性化の取り組みなのです。
本日は森さんが活動出来る舞台を用意するために、まちづくりに尽力している方々と打ち合わせを行いました。舞台で踊る人と舞台を用意してくれる人、どちらが欠けても地域は上手く機能しませんから、ひとつの文化を地方から発信するためには、表に出る人と裏で支える人が必要なのです。
中心市街地を活性化させようと取り組んでいる人、そして和歌山県から世界に文化を発信しようとする人がいます。人の出会いが化学反応を起こし、その人が地方を輝かせてくれる予感がします。
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