499.元気の素
 北海道から沖縄まで、全国で大型商業施設の立地に携わってきたAさんと懇談しました。人生で最後の奉公の気持ちで和歌山県を活性化させたいと考えてくれています。今までの経験を次の世代に託したいと、日本の歴史、和歌山市の今まで、そして自らの経験談などを話してくれました。
 「今まで社会を担ってきたと自負心がありますが、後に続く人に思いを託したいと思っています。最後は生まれた土地である和歌山県に元気を取り戻して欲しいのです。経験と人脈を引き継ぎこれからの社会を担って欲しいと思います」と時間を割いてくれました。
 それでも、現在も毎月二回、東京の勉強会に参加して知識を仕入れています。それは、常に社会の動向を把握しておくことが地域で生活するにしても大切なことだと認識しているからです。歴史を知り、今の日本と世界を知り、地域を知り、そして将来を見通すことが重要なのです。

 さてAさんが子供の頃、和歌山市は全国でも産業や経済規模などで上位に位置していた都市だったそうです。当時の主力産業であった製材、染工、繊維、皮革などの工場が立ち並び、働く場所を求めて全国から人が集まっていたのです。カネボウやニチボウ、フジボウなどの花形産業が立地していましたし、市内を流れる和歌川沿いには製材所や皮革工場が並び、全国に向けて製品を送り出していたそうです。現在で言うなら、経済を支える企業群が立地する地域だったのです。

 それが戦災と産業構造の変化などから次第にこれらの産業は衰退し、工場の撤退などに歯止めがかからずに和歌山市の地位は低下して行きました。その時に現状に甘んじることなく時代の先読みをしていたら、また手段を講じていたら業構造の転換を図れていたかも知れません。その後、住友金属和歌山製鉄所の進出があり持ち直しましたが、現在に至るまでその位置は回復していません。

 Aさんは、住友金属和歌山製鉄所頼りにするのではなく、和歌山市の辿った歴史を知ると停滞している課題が発見出来るのではないでしょうかと話してくれました。出来ることは、先進地からの資本や意見を受け入れることをすべきなのです。外国企業が日本市場に進出場合、その企業の日本人従業員は口を揃えて「日本市場は特殊ですから海外の市場とは異なるので、今までの戦略は通用しませんから」と言うそうです。
 確かに、製品のデザインやパッケージ、仕様の多様さなど商品の本来機能以外のところまで注意を行き届かせる必要があるなど特殊性を感じますが、外国企業の責任者は「どこの国に行っても同じことを言いますから」と全く気にしないのです。日本人を初めとする迎え入れる国の意識は、自分の国は世界でも特別なので本の国のやり方は通用しないと暗に述べているのですが、世界を相手にしている企業にとって特殊性などは誤差の範囲なのです。
 和歌山県も他の府県と違って特殊な地域なので、他の地域から進出して事業を成功させるのは簡単ではないと思っている部分もあるように感じますが、実はそれほど大差はないのです。排他性を売り物にしないで良いものは同化させることも必要なのです。和歌山県の課題はその辺りに潜んでいるかも知れません。

 また世界では決してアメリカに追従していないことなど、わが国の課題についても話してくれました。特にヨーロッパ諸国はアメリカとは違うので、アメリカが風邪をひいても風邪にかからないのです。参考までに、現在の日本はアメリカが風邪をひいたら肺炎になると表現してくれました。本当に日本は国家なのか、そのことも考えて欲しいと課題をいただきました。

 「議員には様々な要望があるでしょうが、小さいことばかりに気を取られないで、世界の流れを見て和歌山県に取り入れる活動を行って欲しいと思います。道が凹んだのを直すことなども大切だと思いますが、政治家には大きな指針を持って地域を引っ張って欲しいのです。地域に大きな政治家がいると地域は発展するのです。」国際人からの意見です。
 また「口々に要求を言う人はいると思いますが、応援している人は黙って応援していることを忘れないで下さい。直接は言わないけれども、そんな人は近くにも沢山いますよ。小さいことに引っ張られることなく、視点の大きな活動を期待しています。」とも意見をいただきました。期待されていることは元気の素になります。

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