457.あと一歩
 やるからには一番を目指す。そう思って何かに取り組み始める人は多いのではないでしょうか。その気持ちも新たにスタートする季節は、新年、新春、そして今年も夏が終わり後半戦になっていることに気付き、また暑い季節が過ぎ去り過ごしやすくなった秋も候補のひとつです。

 誰でも最初は頑張れますが、途中で投げ出してしまうことになりますから気を引き締めたいところです。
「一日位やらなくても大丈夫だから」「明日、二日分やれば取り戻せるから」「少しだけ休憩しよう。毎日頑張っているから」など、自分で理屈を述べて、繰り延べする時期があります。ここは確実に注意信号です。自分の気持ちの中に発生する怠けの気配、封じ込めたいものです。

 さてある銀行の元支店長は、どこの支店に異動しても、その店舗の成績は一番になったそうです。厳しい訳ではないのですが、何故か部下のやる気を引き出しているのです。元部下の人は「あの支店長の下でいると何故か気持ち良く仕事が出来るのです」と言います。

 リーダーの資質は人によって違いますから、その秘密は分かりません。しかし周囲にいる人のやる気を引き出す力を持っている人はいます。組織においては、仕事の能力に優れたトップがいると業績を伸ばしますが、仕事が増え組織構成員が増えると、そこからの伸びが難しくなります。何故なら、仕事量が増加すると一人で仕事全体を見ることが出来なくなるため、どうしても部下に任せる分野が多くなり、その結果、自分が行っている仕事の品質を保てなくなるからです。組織が大きくなると、各部門を任せられる人材を配置していくことが必要となります。優れた人材を配置すること、そこが伸びようとする組織にとって正念場と言えるかも知れません。
 
 さて元支店長の話に戻します。実は成績を伸ばせたのは、部下が気持ち良く仕事の出来る環境を整えだけではありませんでした。実は支店長自らも相当の努力をしていたのです。成績を伸ばすためには誰でも努力していますが、結果として一番と二番手以下に分かれてしまいます。

 一番の支店と二番の支店では評価が全く違います。一番は一番ですから、常に注目されますし、相応の処遇もされます。どの分野でも一番の人や優勝者は記録と記憶に残されますが、二番目の記憶は時と共に消え去ります。それほど違いは大きいため、私達は置かれた分野で一番を目指すのです。

 一番になると得られるモノは桁違いですが、二番手の努力が一番の人よりも数段劣っている訳ではありません。一番と二番の努力の差はごく僅かなものです。数値化すると、二番手の人が100の努力だったとすれば、一番の人の努力は101か102程度ではないでしょうか。
 例えば世界陸上の大会でも、トラック競技の一位と二位との差はコンマ何秒以下の争いです。ゴルフでも一位と二位の差は1打差と言うのは珍しくありません。
 このように少しでも上回っただけで一番になることが出来るのです。そして一位と二位の差はとてつもなく大きいのです。同じ努力をするのであれば、もう限界だと思った時に、もう少しだけ手を伸ばすことが後一歩の努力だと思います。

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