関西空港からイギリスの大学に進学するためにひとりの若者が旅立ちました。平成18年春、大学を卒業し自分の生き方を探すために、そして自分を試すために世界に立ち向かいました。素晴らしい決断と成功への道を歩み始めたこと、心から期待を込めて頑張って来て下さいと言葉を贈ります。
彼は大学を卒業する際に、就職すべきか、大学院に進学すべきか、それとも父親の会社に入るべきか迷った日々がありましたが、迷った末に決断したのはイギリスに留学することでした。イギリスの大学院に進学し世界観を養うことと、世界の同世代と交友を図り将来経営者となった時の財産にすることなどが留学の目的です。昨夏三ヶ月プレ期間として短期留学体験をしていますが、本格的に渡英するとなるとかなりの決断が必要だったと想像出来ます。
世界を勉強してくると決断を下した子どもも素晴らしいですし、その決断を支持した両親の決断もまた素晴らしいものです。そしてこのような大きな決断を下す過程に立ち会えるたことは、私にとっても心が震えるような大きな経験です。
決断が周囲から支持されるためには、本人のぐらつかない意思と周囲の方の愛情が必要です。本人だけがやりたいと思っても実現しませんし、逆に周囲が本人に薦めても本人がその気にならないと決断出来るものではありません。データを持って判断するのと異なり、決断はデータ分析ではなく勇気を持ち合わせていることが必要です。旅立とうとする人と背中を優しく押してあげる人、双方の決断が次の世界を開きます。
長男を送った関西空港からの帰り、和歌山市に残る両親は車の中で涙を流しました。寂しさと不安感、そして期待感から来る複雑な気持ちだと思います。両親にとって子どもは、何時まで経っても子どもです。大人になった子どもでも両親からすると小さい頃と同じように映ります。子どもはどこか頼りなく、見守ってあげないと不安だと言う気持ちを持っているものです。
大人になった私達がそうであったように、何時までも子どもだと思っていた子ども達は突然旅立ちの時を迎えることになります。両親にとっては突然のことでも、加速度的に経験を積み大人になっていく子どもにとって旅立ちとは、助走してきた結果なのです。
両親が通ったことのない未知の世界に踏み出す子どもに対して、両親は今までとは異なり、手の届かないところで活動する子どもを助けることは出来なくなります。誰でもいつかその寂しさを感じる時が来るのです。
両親は、何時か子どもに自分を乗り越えて欲しいと思うものですが、その時がやって来る時は、次の時代の幕が開いたことを意味します。自分の意思のバトンは子どもに託され、それに伴って両親の役割は変化を余儀なくされます。社会の主役から社会を支える存在に。それは経験を積んだ人が担うべき役割ですから、子ども旅立ちの日に大人も新しい役割を認識すべきことかも知れません。
子どもが旅立った後は大人にとっても未知の世界ですから、人生とは幾つになっても難しいものです。
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