282.苦労は楽しみ
 和歌山県の卓球界で多大な貢献を果たしているのが那須純一さんです。平成17年秋、叙勲を受けたことをお祝いする式典がありました。
 那須さんは卓球に関わってから50年以上経過しています。選手として、コーチ、監督して、そして卓球人口の増加のために今尚尽力されています。半世紀以上ひとつのことに打ち込む姿勢、そして和歌山県のレベルを全国に通用するレベルにまで引き上げたこと、競技だけではなく楽しみとしての卓球人口を増加させていることなど、和歌山県での功績は記載することは出来ない程です。

 和歌山県のレベルを上げるためには一流の選手と触れることが大切だとの考えを持ち、レベルが低い時代から中央で活躍している一流選手を和歌山県に招待し、若い選手と接する機会を作り続けてきました。若い時代に一流の人物、一流の選手に接することはかけがえのない体験になり勉強にもなります。今も変わらずそれを継続しているのです。

 那須さんの言葉の中で印象的だったのは、かつて卓球はマイナーな競技でしたが今では人気競技になっているというものです。「叙勲を受け感じることは、今までの過程は苦労だと思っていたけれど決して苦労ではなかったことが分かりました。卓球に関わることは苦労ではなく楽しみだったことが今になって分かりました。好きなことに関われることは苦労ではなく楽しみだったのです」

 仕事でも何でも現役の最中は壁が立ち塞がり悩むこともありますが、向かっているからこそ障壁があるのです。それを乗り越えて達成していく過程は苦労ですが、実は楽しみでもあります。苦労がなく簡単に達成出来ることばかりに挑戦していても、それは楽しみにはなりません。
 苦労しても挑戦するのはそれが好きだからであり、好きなことが出来るのは楽しみなのです。50年超える年月、それに人生を賭けて取り組んで来た道程は、好きなことを楽しみながら達成して来たことを表しています。
 福原愛選手の活躍に代表されるように、日本から世界レベルの選手が登場するとその競技への注目は集まります。でもそれを支えるのが競技人口の増加であり卓球の楽しみを分かってもらうことです。それが指導者としての役割ですが地道で息の長い仕事になります。

 今では那須さんの教え子が現役を引退し卓球の指導者として活躍、裾野を拡げてくれています。那須さんは叙勲で活動が止まるのではなく、これをきっかけに更に和歌山県の卓球人口の増加とスポーツ文化と競技レベルの向上に向けた取り組みを行っています。
 那須さんは生涯現役で卓球に関わっていく覚悟です。その横では奥さんが楽しそうに微笑んでいます。

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