167.都をどり
 「都をどりは」「よーいやさー」で始まる京都祇園の都をどりの開催期間、祇園は一層華やかな雰囲気が漂います。都をどりが開催されているのは花見小路にある祇園甲部歌舞練場で、歴史を感じさせ風格のある建物です。
 友人の娘さんが平成16年12月、祇園で芸子「小愛」になって初めての舞台なので応援に出掛けました。
 芸子になるのは大変な期間と修行が必要です。小愛さんの場合、17歳から修行に入り舞妓になり、4年の期間を経て芸子に昇格しました。この間学校に通うのですが、習得すべき科目は多岐に及んでいます。三味線、長唄、笛、太鼓、舞踊、茶道、華道、絵画、習字など一人前になるまでに身につける技能は盛り沢山です。ひとつでも習得するのは大変なのに驚きます。
 舞台に立っている芸子はこれらの技能を身につけている訳ですから、奥行きの深さを感じることが出来ます。日本の伝統を若い女性達が確かに継承しているのは感動モノです。

 ここに伝統文化がある地域の底力すら感じます。モノならお金で何でも入手出来る世の中ですから、ややもすると効率主義者となり、極力苦労を避ける傾向にあります。15歳から17歳位の女性が夢と志を持ち修行の道に入るのは並大抵のことではありません。
 通常人は、底が見えるようなもののために修行をしようとは思いません。芸子の道に日本が持つ伝統が行き続けているから、楽をしようと思えば楽が出来る現代社会なのに、厳しい道に進む方達がいるのではないでしょうか。今舞台に立っている芸子達は、厳しい訓練に耐え残ってきた方達の集団でもあります。
 その様にして残ってきた、技能と日本の伝統を備えた芸子の踊りと演奏の舞台は、日本人であって良かったと思わせる程です。

 都をどりは、春夏秋冬と次のシーズンの春を演奏と踊りで表現しています。希望に満ちた春から始まり、人は楽しいことや苦しいことのある人生を過ごします。希望も悲しみも体験した後、再び春がやってきます。やはり何があっても人生は楽しいものであることが分かります。春は希望の季節、希望を持つことが人生を華やかなものにしてくれます。

 伝統文化に触れることで教えられるものがあります。こんな近くで伝統文化に触れられる地域はそう多くはありません。ある調査によると、祇園通りは日本人が一番好きな道だそうです。それは電柱が地中化されたり、景観を保つために最近の建物でも周囲との調和を図っている道の景観の魅力だけではなく、伝統文化の魅力があるからだと分かります。その伝統文化の一部分を最前線で伝えているのが芸子と舞妓たちです。

 長年に及ぶ厳しい訓練に耐え、そして残ってきた芸子が魅せる舞台は、見る人の心に深く潜り込みます。日本人が持つDNAに働きかけ、目覚めさせる起動装置のようです。

 文化やブランドは真似できるものではなく、間違いなくブランドである祇園のような伝統文化の拠点が地域にあることは羨ましいものです。伝統や文化を備えた地域は、活性化よりも凄い風格を持っています。

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