106.IT産業
 和歌山市に本社がある日本ネットサービス藤田社長の話を伺いました。藤田さんは30歳代前半の若手経営者でIT系の企業です。話を聞いたら藤田さんが起業した時のことを思い出しました。会社設立の登記を2000年1月1日にしています。これは新しい世紀に立ち向かう意味込みを示しているもので、今でも過去にある会社とは一線を画した会社経営を目指しています。藤田さんの会社の最大の強みは、大阪府下のお客さんからインターネットに関する問い合わせがあれば、どこでも1時間以内で駆けつけられる体制をとっていることです。
 本社のある和歌山市を含む和歌山県内での売り上げは全体の10%で、残りの90%は県外からの売り上げです。現在の和歌山市のマーケット規模からすると仕方ないのですが寂しい数字です。

 さて、会社の名前をつける時に藤田さんは既に目的を持っていたため、それを体現する社名をつけました。目指すべき会社規模とどこまで行けるのかについて、藤田さんは当初から明確にビジョンを描いています。社名から、日本をネットで結びつけて一番のネット環境サービスを提供することを目的としたことが分かります。

 今、規模が大きくなるに連れて更に会社を維持発展させるためには、人材不足が課題となっています。就職希望者はたくさんいるのですが、人材はなかなかいないそうです。会社の規模が大きくなると目的意識が薄くなるのも問題です。従業員が少ない時代は各人はやるべきことを明確に持っていますから、職場の空気は緊張感の中に楽しみがあったのです。ところが従業員が増えるに連れて、目的を持たない人の割合が目立ち始めます。
 規模が大きくなると一人だけ手を抜いても、組織が自然にカバーしてくれるため悪さの原因が分からなくなります。中途半端に大きくなると大企業病も発生してくるのです。ですから必ずしも大きいことが良いことではないのです。
 とにかく企業は人です。企業に入ってから勉強を続けることで、個人の組織も伸びることが出来ます。環境を与えられた当初、勉強は誰でも行いますが、継続することが難しいのです。継続することで技術も人間的なレベルも向上します。

 従業員にとって最も大切なことはコミュニケーション力です。人との折衝が出来るこの能力が企業にとっても個人にとっても最大の武器となります。それは技術や知識だけで営業は成立しないからです。企業は営業力が強くないと生き残れませんが、その基になるのが個人のコミュニケーション力です。この能力を有する人材が決定的に不足しているのです。個人主義、成果主義、情報化社会の産物ともいえるのが、他人と会話する能力の低下です。当たり前のことが出来る能力を持つことが、現代社会では優位性を持つことになります。
 ここでは技術力は確保しているので、それを活かすために営業を最優先にしています。会社内の打ち合わせは最小限に留めるのは当然のこと、お客さんからの電話を最優先にしています。従業員同士で電話している時でも、お客さんからの電話が鳴ると、話の途中でも電話を切り、お客さんの電話を取るようにしています。従業員同士でも話の途中で電話を切られると気分が良くないものなので、予め、話の途中で電話を切った場合は、お客さんからの問い合わせがあったと思うように伝達しています。そこまでマーケット・イン(お客さんを第一にすること)を徹底しています。

 IT産業は新しい業態なので、決まった仕事の型はありません。お客さんも気づいていないサービスを提供することで可能性は無限に拡がります。決まっていない分野に参入することで仕事はやってきます。この考えは他の分野でも役立ちます。

コラム トップページに戻る

前のコラムへ   /  次のコラムへ