ユニバーサルデザイン(以下UD)は1980年代、ノースキャロライナ州立大学のロナルド・メイス教授により提唱されました。UDは邦訳すると万人向け設計となります。一般的に製品は各国の身体や特徴の平均値に合わせて製作されるため、平均値から外れると使い勝手が悪くなります。そのため、誰にとっても快適な生活となるように、設計やアイデア段階からUD思想を考慮することが大切です。
UDには7つの原則があります。
1. |
公平な利用。子どもや高齢者、障害者も健常者も誰でも同じように
使用できること。 |
2. |
利用における柔軟性。日常生活に無理なく適合できること。
立っても座っても右手でも左手でも同じように使用できること。 |
3. |
単純で直感的な利用。言葉で表現されていなくてもマークで表示されているなど一目で分かること。 |
4. |
認知しやすい情報。考えなくても利用方法が分かること。 |
5. |
失敗に対する寛容さ。ワードで誤って入力してもボタン一つで一つ前の状態に戻れるように、失敗しても取り返しがつくこと。 |
6. |
身体的労力を最大限に抑える。使用するに当たって無理な体勢を強いるものであっても、工夫やデザインによってそれを抑えること。 |
7. |
利用者がアプローチできるための十分な空間と大きさがある。改札の幅を1.5倍にすると、車椅子の方や子どもと一緒でも、助けを借りずに改札を通れます。特別扱いしないことしくみが大切です。 |
この7つが原則ですが全て揃うことは殆どありません。ひとつでもふたつでも人に優しい工夫を行うことで、誰もが快適な生活をおくれます。UD思想を取り入れた社会は、障害を持っている方でも健常者にとっても快適な社会になります。
シャンプーに点字が刻まれていると頭を洗おうとする健常者にとっても便利です。500円硬貨と100円硬貨の大きさが違うため触覚で違いが分かり、これは健常者にとっても便利です。
そして使いやすい設備やそのための設計は大切ですが、それ以上に、人の心の問題であるソフトが最も大切なのは言うまでもありません。アメリカでUDが誕生したのは、人種差別や社会的弱者への配慮からです。
外観だけではなく差別問題や社会的背景を取り入れたものがUDですから、誰にとっても親切で思いやりの気持ちを組み込みたいものです。他の誰かに接する態度こそが最大のUDになるような気がします。