(2)黒潮リーグ構想について
四国独立リーグ構想の素晴らしいのは、野球文化の拡大を図ることに加えて、スポーツによる地域興し、地域振興を目的にしていることです。シーズン中でも試合のない日やオフシーズンには地元の小中学校に、監督、コーチ、選手が出向いて野球教室を開催する予定です。スポーツを通じて地域交流を図ることで活性化に結びつきます。
既に南九州、北陸、東北にそれぞれ独立リーグ設置の動きがあり、アメリカの独立リーグ機構に入る日本独立リーグは2006年の開幕が予定されています。この日本独立リーグには、千葉県、埼玉県、神奈川県、岡山県、宮崎県などが候補地とされています。複数の自治体への働きかけが始まっていて、10万人都市で3,000人の観客が見込めれば採算が取れるとしています。
残念ながら和歌山市の名前は、どの独立リーグ構想にも挙がっていません。このことはストレートに現在の和歌山市に魅力がないことを表しているものです。
しかし和歌山で独立リーグを迎えたい動きがあるという情報が、東京にいる日本独立リーグに関わっている有力者にも伝わりました。年内の早いうちに意見交換したいとの話をいただいています。このように最初の一歩は大きな一歩となります。
楽天が仙台市に新球団のホームを設置したことにより、プロスポーツ空白地帯でも誘致の機運が盛り上がっています。ある新聞が、県庁所在地でプロスポーツの立地可能都市の調査を行っています。
指標は、人口、企業支援力、スポーツ豊かさ度、ボランティア行動率、スポーツ観覧率の5項目です。各5点で満点だと25点となります。
1位は19点で、東京、名古屋市、岐阜市の3都市。札幌市、仙台市、広島市、鹿児島市が18点で2位となっています。岐阜市は以外ですが、人口や企業支援力は低いものの、スポーツ施設の充実度や利用環境が良いことがスポーツ豊かさ度を高め、ボランティア行動率も高得点でプロスポーツを受け入れる土壌があると言うものです。
岐阜市の他、上位に来ている仙台市や鹿児島市の共通点は、ボランティア行動率が高いことです。プロスポーツを運営するためには、スポンサー企業に任せるだけでは駄目で、地域住民の幅広い支援が不可欠なのです。人口や経済力で劣る地方都市でも、ボランティア意識が高く、スポーツ環境が良ければ立地が有望な都市となり得ます。
新潟市では2008年にプロ野球に参加するために、商工会議所などの経済界が中心となって準備委員会がつくられています。サッカーJ1やプロバスケットボールに続く地域密着型のプロ球団を設立する計画です。
Jリーグの「アルビレックス新潟」により入場料金やグッズの売り上げにより22億円から24億円の経済効果を上げています。スポーツ不毛の地と言われた地域でもプロスポーツ立地の可能性を示した事例です。
大和総研クオンツチームの調査によると、日本ハムが移転したことにより北海道企業の株価は好調ですし、東北経済産業局は、仙台に新球団が出来ることによる東北6県の経済効果は年間200億円以上と試算しています。
独立リーグ計画のある四国のランキングは、松山市30位、徳島市39位、高松市39位、高知市43位といずれの都市も下位に位置しています。
参考までに和歌山市は8点の45位で、和歌山市の下には那覇市と青森市があるだけという寂しい結果になっています。
どうしてもこれで良いとは思えません。和歌山市が魅力のない都市と評価されている現状で行動をしなければ、本当に元気も魅力も何もない都市になってしまいます。
厳しい時代に私達がリーダーに望むことは「明確なビジョン、方向性」です。明確なビジョンとは、進むべき方向性を示して点在する潜在力をひとつの方向に統合する力のことです。それが示されることで、個人や企業は必ず期待をもって行動します。行動した結果に満足や利益が得られるという期待です。ビジョンにはこの期待をソフトにコーディネートする力があります。
市政に対して私達市民は、この明確なビジョンを求めています。方向性が示されることで、和歌山市が未来に向かっていることを実感し、私達の期待も方向性も見えてきます。
繰り返しますが、ビジョンとは期待を抱かせと行動を起こさせるものであることが条件です。
財政問題は決してビジョンとはなり得ません。何故なら、黒潮リーグなど夢を与えてくれるものには投資意欲が沸くことがありますが、借金を埋め合わせるために好んで投資をしようと思う人はいないからです。
四国独立リーグは平成17年1月に選手契約を行い4月に開幕しますから、今すぐ和歌山が名乗りを挙げても、発足直後からの参画は叶いません。でも2年目から参画しようとするならば、今から名乗りをあげて、運営組織であるIBLJに認知してもらう必要があります。
それでようやく間に合うのです。和歌山市のスポーツ立地可能性ランキングからすると、何もしないで先方からアプローチが来ることは永遠にありません。能動的に意思表示することで可能性が見えてきます。
これらデータを示しましたので、スポーツによる地域振興と、和歌山市活性化のための黒潮リーグ構想に関して市長の考えをお示し下さい。出来るならば、和歌山市が中心となり有田市、田辺市、新宮市にも話を持ちかけ、県知事にも提言していただきたいのですが、この点も併せてお答え下さい。
(3)和歌山大学観光学部
県では先の県議会で、関係市町村や経済団体など関係団体に呼びかけ支援組織を設置するなど、地元と大学が一丸となった取り組みを進める意向を表明しています。
和歌山大学と県は設置に向けて話し合いの場を持っていますが、和歌山市との話し合いはされていないようです。
わが国の観光学部の第一人者である立教大学観光学部の岡本教授と話をした時のことです。和歌山市の環境は観光学を学ぶのに相応しく、今の和歌山大学の熱意を持ってすれば必ず実現すると述べてくれました。和歌山市が大学の観光学部を持つことは、東京都が観光学部を持つよりも意義は数段あると、その価値を認めています。紀州徳川家の歴史的背景と恵まれた自然環境からの発言です。設置に向けて正念場であるこの時期、地元和歌山市の支援体制が是非とも必要です。
日本にはこれまで、接客を中心として体系的にサービス産業を学べる学校はありませんでした。アメリカやヨーロッパでは早くからホテル・マネジメントビジネス(ホテル経営)、ホスピタリティ・マネジメント(経営への気配り)、ツーリズム(観光学)などの学部が設置されており、経済のサービス化に対応しています。しかし最も重要な、21世紀型経済を牽引する内需中心の経済サービス化の分野で、日本の対応は大幅に遅れています。
21世紀型経済を牽引する意味からも、和歌山市で和歌山大学観光学部を設立するために最大限の支援体制を取っていただきたいものです。
次年度に向けた和歌山市の支援体制について計画を示して下さい。
今回取り上げた三点は、いずれも民間、あるいは大学が主導で行政が後押しする民間活力を活かすスタイルで、元気が出て夢のあるものです。
和歌山市でもNPO活動の元気さが目立っています。NPO先進地の仙台市にある地方新聞から和歌山のNPO活動の取り組みに関しての取材があり掲載されたと聞きます。夏のよさこいの賑わいも記憶に新しいところです。これらは出来ないと思っていたら実現しなかったものです。市長を初めとする当局の皆さんにおかれましては、民間の力がまちを活性化させるための取り組みを支援して欲しいものです。
最後に、ある経営者の言葉を紹介させていただきます。その方は「夢は実現できるのか」という問いに対して「夢しか実現できないじゃないですか」と答えているそうです。
夢を描かないと何事も決して実現することはないことを申し述べて、一般質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。