【不安と法律】
法律上設置に問題はなくても、常日頃から住民に不安を与えている公共施設があれば問題かも知れません。公共物が自然災害により倒壊し誰かの家屋を損壊させた場合、一般的には公共物の設置者に責任はないとされています。そして自然災害による家屋損壊などは火災保険に加入していても保障されないのが一般的だと思います。
ところが住民が設置者に対して、日頃から不安の意を示していたのに、その不安を取り除くような施策を講じていないとすれば一体どうなるのでしょうか。詳しくは分かりませんが、住民が家屋に隣接する特定の公共施設に対して倒壊などの不安感を持っていることを設置者が知りながら、何の対策もとらないで放置していた場合、自然災害で本当に倒壊して家屋を損壊させたなら、問題があるように感じます。
公共施設の設置者は、法律上の責任の有無よりも住民が感じる不安を重視した取り組みを講じるのが自然だと考えたいところです。日常生活に不安を感じながら生活することの精神的苦痛は第三者には分かりません。法律上問題はない、そして自然災害による被害があり、係争になったとしても勝訴出来ると考えて問題を放置するのは如何なものでしょうか。公共事業に携わる者としては、無茶な要求でない場合、そして到底、改善が不可能である場合などの特殊な場合を除き、住民の不安感を取り除くことが務めだと考えます。
住民の不安を取り除く努力は、法律適用よりも優先させたいものです。
本日、朝一番、住民の方からの申し入れに対する協議では、不安解に向けた意見に沿った迅速丁寧な応対をすることか出来ました。これは現場責任者が住民からの要望に対して、即座に責任ある回答を示してからです。
責任回避は不信感を招きます。回答の引き延ばしは不安感を招きます。そして住民の意見を聞かない態度は信頼を無くします。事件の大半は現場にありますから、現場責任者の判断を机上にいる管理職は尊重すべきです。現場と乖離している管理職の判断は、その組織の社会的信頼を失墜させることになります。
実際に現場を見て、そして住民から直接意見を聞いた人の判断は尊重すべきなのです。
本日は難しい要望でしたから、朝一番に面談し、現場で解決方法を協議し、夕方には初期対応することが出来ました。このような迅速な対応は非常に珍しい事例ですが、現場責任者の決断による即答が住民の不安を解消させた最大の要因です。今後の参考にしたいくらい、即座に困難を解決させた事例でした。
【和歌山大学観光学部】
活動報告に何度も掲載していますが、平成20年4月に
和歌山大学観光学部設置が確実視されています。先日の地方紙にも記事掲載されていますから、認識している人も多いかと思います。本日は観光学部に関して大学と詳細な打ち合わせを行いましたが、問題点が浮かび上がってきました。以下に記します。
平成19年8月27日に、和歌山市の中心市街地活性化基本計画が国の認定を受けたことで、中心市街地の再生に弾みがつきました。ところで本日、この基本計画の各施策と実施場所を改めて確認したところ、和歌山大学観光学部校舎整備計画の位置が旧丸正ビルではなくて、三井アーバンホテルの空きビルと
和歌山東急インホテルになっていました。基本計画に開設場所が旧丸正ビルではなくて、それらのホテルに具体化されていたことに驚いています。
現在のところ、
和島興産を初めとする三社と和歌山大学は賃貸借契約を締結していませんから、中心市街地に観光学部進出が決定している訳ではありません。以前から和歌山大学小田学長が中止市街地に観光学部を開設する意向があることについて、学長記者会見などの場で都度、意思表示はしていましたが、ビル所有者と正式な契約に至っていないことから、希望はあるものの決定事項ではないと認識していたのですが、基本計画に掲載されていることは、即ち基本計画を策定し国の認可を受けた和歌山市と和歌山大学との間で、具体的進め方の詳細な打ち合わせが為されていたと考えるのが自然です。
つまり基本計画の認定を受けたら直ぐに計画実行に移れる、または移せるのが普通です。
ところが現実は全くそうなっていません。
基本計画を国に提出する7月30日の前日、和歌山市が大学を訪れて、基本計画の中心市街地に観光学部校舎を設置することの了承を取り付けにきただけです。しかし大学側は、了承するにも、基本計画に掲載することは計画を具体化させることに他ならないので、掲載するに当たって和歌山市の支援について説明を求めたのですが支援に関する回答はなく、期限が迫っていることから、とりあえず掲載することになり、市としての支援方策について別途協議となりました。ところがその後協議はされていませんから、開設場所に関しての話し合いに進展はありません。つまり観光学部が中心市街地に開設することは既成事実のように報道されていますが、詰められたものではありません。
国に提出する基本計画であり、今後のまちづくりの根幹を成すものですから、関係者と責任者が議論を重ねた上で、意見の食い違いがあったとしても、和歌山市の将来のためにお互いの意思疎通を図って基本計画を仕上げるのが通常です。そして国の認定を受けた直後から、計画を具体化させるための動きをすべきところです。
ところが昨年11月以降、本日に至るまで、和歌山市長は大学からの話し合いの依頼に対して、一度も話し合いに応じていないことが判明しました。責任者が会わずして、基本計画には中心市街地に観光学部校舎を整備することが掲載されていたのです。誰が責任を持ってこの観光学部校舎整備計画を進めるのでしょうか。不明確です。
和歌山大学は観光学部開設まで国との折衝や関係箇所との連携など、本筋に関する調整を行ってきました。大学の使命のひとつは、人材育成により将来を支える人材を社会に排出することにありますから、観光立県和歌山を目指した人材育成のための学部を開設することは責任感のある取り組みだと言えます。
そして中心市街地を再生するために新学部を、この地域に来てもらいたいとするのが当該地方自治体の役割です。大学と言う産業を誘致するための支援体制を整えることも、当該地方自治体の大切な仕事です。ところが大切な計画にも関わらず、充分な話し合いが為されていないのです。
新学部を中心市街地に、基本計画にあるように三井アーバンホテルビルと和歌山東急インホテルに開設するのであれば、ビルのリニューアルや必要機材の準備には最低、平成19年10月にも拠点施設を決めてリニューアルに着工する必要があります。何しろ、平成20年4月には新しい学生が入学し、現在の一回生と合せて新しい教室で学ぶことになるのです。新学部の開設場所の意思決定は、平成19年9月が限度です。
そのため至急、開設場所と教室の整備や契約に関する諸条件を詰めていく必要があります。
さて地元自治体としてどの様な支援が出来るのかは分かりませんが、熱意を持って新学部を中心市街地に誘致する意気込みを示す必要があります。
個人的考えですが、いくつかの案を示します。
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まちづくり三法の補助施策に関する説明を大学責任者に対して充分に行うこと。
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まちづくり三法を活用して、新学部の教室が入る計画の三井アーバンホテルビルに対して、空きビル再生のための補助金適用について検討すること。三井アーバンホテルビルの内、大学がリニューアル費用として負担する総額は約1億3,000万円ですから、将来的な運営と維持のために初期投資を軽減させるような国からの支援を要請して欲しいところです。
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ぶらくり丁の活性化に資することから、空き店舗を和歌山市が借りて大学セミナーハウスとして活用できる整備を行うこと。
県レベルでは紀南のある市が、観光学部の学生が観光体験を行える取り組みを提案すると共に、大学のためにセミナーハウスの設置を検討してくれています。また紀北のある市の施設にもセミナーハウスの貸与が検討されています。このように和歌山県における観光学部の意味を理解している自治体は大学に対して、観光学部の授業場所の誘致と支援施策を提案しています。
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和歌山市長から市町村長会に協力を求めて、各自治体で出来うる取り組みを検討してもらい大学に実施可能な支援施策を提案すること。
新学部の拠点となる当該自治体が先導役を担って欲しいところです。
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和歌山大学観光系学部設置促進協議会からの具体的支援についても検討して欲しいところです。本促進協議会は、和歌山大学観光学部の設置を応援するため、和歌山県、和歌山市、和歌山県商工会議所連合会、(社)和歌山県観光連盟を初めとする25団体が和歌山大学観光学部設置促進期成同盟会を結成しています。
そしてその目的を、地域の活性化と教育・文化の進展に資するため、和歌山大学への観光学部の設置を促進することとしています。また会長は仁坂和歌山県知事、副会長は大橋和歌山市長、和歌山県商工会議所連合会会長が務めています。
余談ですが、和歌山大学にシステム工学部が設置された際、当時の促進協議会は、設置に当たって約2億5,000万円の支援を、そして開設後は5年間、毎年5,000万円の支援を行っていると聞きました。それ程地域にとって大学の新学部開設についての期待は大きいのです。今回も促進協議会からの支援について検討して欲しいと願っています。 |
いずれにしても、中心市街地に観光学部の校舎を設置するためには、予定地の地元自治体が新学部支援に対する熱意を示し、支援体制を整えることが不可欠です。現時点で具体的な支援策の提案は出来ないとしても、せめてその意気込みを示してくれることを願っています。いよいよ来週が正念場となります。
【その他】
和歌山市内の就職状況についての打ち合わせ。希望する職種、希望する働く職場があることがまちの元気度を図る指標になります。和歌山市では正社員として働ける機会が少なく、いきなり正社員ではなく新しい雇用形態についても検討する必要があります。今後の働く場所の確保について話し合いを行いました。
続いて和歌山県の活性化策について打ち合わせ。企業誘致、そのための民間で可能な条件整備などについて具体的に協議しました。
和歌山市内の環境保全対策について打ち合わせ。汚れた川など環境面で地域の再生を図るための施策について話し合いました。
和歌山大学観光学部が地域にもたらしてくれる波及効果や活力について話し合いました。地域の期待は相当大きいものがありますから、是非とも人材育成と地域活性化の両面の役割を果たしてほしいと話し合いに参加した皆さんが思っています。