【民間の防災対策】
ある自治会で自主的に防災無線を取り付ける取り組みを行なっています。災害時に備えて連絡体制を敷いておくためです。効果的な無線発信と安価に仕上げるため、事前に打ち合わせをして設計と配置図が仕上がりました。行政だけに頼らない自治会の動きが出始めていることは心強い限りです。関係者が上手く連携すれば、難しいと思うことでも迅速に実現に向かいます。ひとつの目的に最短で向かうためには、目的を達成するのに必要な専門分野が異なる人を集めることが如何に大切なのかが分かります。
【民間と行政の連携した防災対策】
和歌山市の災害への備えについて会合を持ちました。東南海・南海地震の浸水予想図を公表したことから、毎日のように沢山の方が市役所に相談に来ています。和歌山市の沿岸部地域を中心にして、避難場所表示板を掲出するための枠組みを検討していますが、本日は具体化に向けた役割分担を行い、実現が目前に迫ってきた感触を得ました。
民間と行政が一体となった取り組みは、お互いの強みを発揮できるので課題の克服に向けて積極的に行なうべきですが、前向きに進むまでには時間を要します。特に初めての取り組みは慎重姿勢になるため前身する感覚を実感しにくいのです。行政組織は専門分野毎に部門が分かれているため、部門間調整に時間がかかり過ぎる弱点があります。それを乗り越えて前に進めるためには、どれだけ本気になるかにかかっています。
本気のメンバーが集まれば同じ問題でも前に進みます。今日は部門を越えて集まり一気に山を越えましたが、仕事はやはり人に尽きることが分かります。
【岡山電気軌道鉄道】
貴志川線の運営主体は、岡山電気軌道鉄道株式会社が担うことに決定しています。本日は同社の磯野省吾常務が和歌山市に来ていただけたので、お会いし懇談する機会を得ました。
(岡山電気軌道鉄道の磯野常務を囲んで) |
貴志川線については平成18年3月末日までは南海電鉄が運行を行い、同年4月1日から新会社が運転を行う予定です。運行本数は平日96本と現在と同数を予定していますが、情勢変化があれば増便も考えてくれることになっています。
岡山の鉄道会社が貴志川線運営に公募してくれたのは、全国で地方鉄道が廃止の危機にあることから、鉄道事業者として何とか存続させたいとの思いからです。地方鉄道の存在意義はなくなったかのような感じを受けますが、環境問題や各都市の交通事情を考えると、これからこそが存在意義を増すはずです。岡山電気軌道鉄道は路面電車を存続させる決断をしたから現在の会社があると考えているように、地方鉄道を上手く経営して残すことが地域活性化にもつながると考えています。
同社では、岐阜市や日立市で地方鉄道の再生も検討したようですが、地方自治体、議会、既存の鉄道会社、市民の意見がまとまらなかったので見送っています。貴志川線については、これらの関係者が非常にまとまっている背景があったため、経営が可能と判断してくれたようです。
しかも貴志川線には安全装置のATSまで取り付けられていて、線路や車両もきっちりと整備されているため、現状施設で後10年は手を加えなくても大丈夫との判断もありました。
南海電鉄も岡山電気軌道鉄道が経営をするのであれば全面的に支援するとの姿勢を示してくれたこともあり、新しく経営するための環境整備が出来ていたことが経営に乗り出すことを決定した理由です。
これだけの経営環境を整えて待ってくれているのだから、是非とも経営を成功させて全国の地方鉄道のあり方のモデルに仕上げたいとの思いを持ってくれています。仮に貴志川線が失敗すれば、全国で廃線の危機にある地方鉄道の再生は失敗する程、再生条件は整っています。
当面は赤字と予想していますが、ランニングコストで赤字にならないように経営を行い、10年後には行政からの補助金が無くても経営できる体質にする計画です。そのため経営者と運営責任者の間に運営委員会を設置し、運営に関してモノを言える体制を整えます。運営委員会は、市民の方々、行政職員、議員、大学の先生など貴志川線再生にやる気を持っている10名程度が就任し、意見と要望を提案していただく会議体です。
岡山市にある公共交通機関を支援している民間団体のRAKUDAは、毎週火曜日午後7時から会議を持ち、公共交通機関とまちづくりについて議論を交わしています。岡山市の地元の鉄道会社やバス会社は、その提言も参考にしながら経営に活かしすしくみを作っています。貴志川線においても、市民団体で貴志川線経営に関する意見提案を行って欲しいと要望を受けました。
新会社の名称は公募により決定すること、従業員は30名を予定していますが半数は地元雇用を図る計画です。参考までに5月16日から6月10日まで従業員15名の募集を行ないます。準備室は貴志川線の伊太祁曽駅に設置するため、面接と採用試験も伊太祁曽駅で行なう予定です。
地元に溶け込むため施策と提言を受け入れる考えを持つ一方で、資本金3,000万円は全額岡山電気軌道鉄道が出資します。経営責任については全て同社が持つことを意味しています。
黒字化するためのアイデアも豊富です。パークアンドライドの推進。車両や駅舎での広告を増加させること。貸し切り列車、イベント列車の運行。子どもを対象とした車庫見学
電車教室の開催。スルットKANSAIの導入。そして各種定期券の発売、これは面白いアイデアです。1年定期、環境定期、サマーキッズ定期などの構想があります。但し、現在のJRと共通にしている改札を別にする必要があります。貴志川線のホームに直接出入りできる改札を設置することで定期券活用のアイデアは実現します。自前の自動改札を持つことで、定期を活用して色々な取り組みが可能となります。
また貴志川線グッズの発行とやりたい人がいればグッズ販売も任せる方針です。鉄道切手や記念切符、車両のミニチュアなどは人気がありますから、これらの貴志川線版を作成すれば全国に販売が可能で貴志川線の情報発信が出来ます。
貴志川線沿いの駅舎は地域に合うようなデザインに変更する意向も持っています。費用面から一気に全数変更するのは難しいので、最初に一箇所改装して地域に密着する駅舎をアピールしていきます。例えば、現状では日前宮駅を降りても駅の近くに神社があることを感じさせるものはないため、駅を降りたところに神社をイメージできるモノを建てるなどの案を持っています。
貴志川線沿線には大きな神社が三箇所もあることは大きな経営資源です。このように立派な神社を持っていることは全国に誇れるもので、この点からも観光客を集めることが可能だと判断しています。このような地域特性を活かした駅舎改装に投資したいとの思いを持ってくれています。
ただし問題があります。当然新会社は赤字から脱却するための経営を行ないますが、黒字化すると行政からの補助金がなくなります。運行で発生した赤字について補填する前提があり、投資的経費として活用出来ないのです。可能であれば、後追いのイメージがある赤字補填ではなく、10年間かけて貴志川線の駅舎や環境を整備する投資的経費として活用を図る方向で支出して欲しいものです。
黒字を出したら補填がなく、赤字になったら赤字になれば補填するのでは、経営意欲が沸かなくなります。それこそ経営意欲を年々減少させ設備投資を行なわなければ、10年で撤退されることも考えられます。これを防止し将来とも地域に存在する貴志川線であり続けるために補助金のあり方について一考の余地があります。
常務の話から、地方鉄道は絶対必要で存続させたい思いが強く感じられます。貴志川線で儲けが出たら地域に還元する予定で、儲けを第一に考えていません。地域貢献を最初に考える経営方針を持つ会社は全国でも珍しいものです。両備グループの方針は、企業は社会からの預かり物という考えで、言い続けていると従業員もその気になって来るようです。
岡山電気軌道鉄道の考え方からは、和歌山市に溶け込み貴志川線を地域活性化のために活用したいとする意思が伝わってきます。
単に地方鉄道を運行するのではなく、市民鉄道として共生する意向を示してくれました。
これが望んでいた姿です。貴志川線存続だけではなく、和歌山市にとって最も必要なやる気とアイデア、実行力を持っています。
【報告会】
夕方からは短時間でしたが市政報告を行ないました。報告は貴志川線存続の枠組みと岡山電気軌道鉄道の考え方について、わかやまの底力事業についてです。少しかも分かりませんが良い息吹を感じてくました。依然として和歌山市の課題は道路であると問題意識を持っている方が多いのです。道路事情を改善して欲しいとの要望が多く出されました。