コラム
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2012/3/15
999    素晴らしい人生

テニスの好きな方の事務所を訪れた時のことです。有料チャンネルで往年のテニス選手の試合の中継がありました。懐かしい名前が並んでいる中に2010年に引退したスペインのカルロス・モヤ・ジョンパール選手のインタビューがありました。モヤ選手は全仏オープンで優勝した経験がある名選手です。

「想像していた人生よりも、現実はもっと素晴らしいものだった」という言葉です。恐らく小さい頃から、テニスで世界のトッププレーヤーに憧れ、それを目指した続けた10代だったと思います。そしてプロテニス選手となり20代は世界のトップレベルの選手を相手に戦いました。

四大大会の優勝は全仏オープンの1回だけです。そしてATPツアーの決勝戦での戦績は20勝24敗と負け越しています。世界ランク一位になったこともありますから強い選手であることには間違いはありませんが、名選手と比較すると物足りなさを感じる成績です。

そんなテニス人生を、思っていた以上に素晴らしいものだったと自己評価していることに感動します。自分が思い描いていた以上の人生を送れる人はどれだけいるのでしょうか。「思っていたことができなかった」、「夢は適わなかった」と後悔している人は多いと思います。小さい頃に自分の人生を想像した人は多いと思いますが、想像を超える人生を過ごしている人がいるとしたら、とても幸せな人生だといえます。

カルロス・モヤ選手の言葉に痺れます。テニスの歴史を刻んだ名選手といえばビヨン・ボルグ選手、ジョン・マッケンロー選手、ピート・サンプラス選手、最近ではロジャー・フェデラー選手などが挙げられます。そんな名選手と比較すると戦績面では劣りますが、本人は十分に達成感で満ちています。小さい頃から厳しい練習を続け、憧れのコートに立つことができ、そして素晴らしい選手と戦えたことがテニス選手として充実した日々だった筈です。他人との比較や歴史に残る選手との比較は無意味であり、自分で磨き上げたテニス人生は他のものに変え難いものであることを知っているのです。

四大大会で優勝1回、そして世界ランク1位を獲得したことは、最大限努力を積み重ねてきた人だけが分かる価値なのです。そこには「もっと勝ちたかった」だとか「もしあの選手がいなかったらもっと優勝できていたのに」という思いはありません。全力を出し切って選手生活を終えた充実感だけが心を支配しているのです。

私達はこれからの自分の人生を想像します。「思い通りになるだろうか」、「願いは適えられるだろか」など考えますが、そんなことを思うよりも、今に全力を尽くすことが明日の人生の土台を築きます。土台を強固なものに返られると、これまでの人生は変えられるのです。想像したものよりも素晴らしい人生を築くためには、その第一歩である今日が大事なのです。午後12時、今日の人生が終わりますが、それは明日へと続く人生の始まりでもあります。午前0時1分、さっきまで明日だった新しい今日が始まりました。

日々新た。毎日が、想像している一日よりも素晴らしい一日に変えられる一日なのです。

最後には、想像していた人生よりも私の生きた人生は素晴らしかったと思いたいものです。