コラム
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2012/3/12
996    大河の流れ

ある自治会の話です。この自治会では毎年同じことの繰り返しで全く発展性はありません。自主的な行事はなく上部団体から依頼された募金を集める活動をしている程度です。

毎年同じ活動をしているだけの「ワンイヤー・スケジュール」だと話してくれました。そして「私が役員になる前はもっと自治会員のための活動をしてくれていたと思っていたのに、全くそんなことを考えてくれていなかったことに驚きました。自分が役員を担っている間は、会員に役立つこと、地域発展のために取り組みたいと考えています」と意気込みを語ってくれました。

自治会の役員に就任したことで行政のことが分かってきたと話してくれています。役員として知りえた情報を会員に伝えること、そして地域の要望を市に提言し改善を求めることも行っています。

問題なのは新しい役員の意見が中々通らないことです。「そんなことはやらなくても良い」だとか「今まで話し合ってきたことなので、今更取り上げることはしない」など否定される場合が多いようです。今までの役員だったら、それならやらないと思って黙っていたと思いますが、そうは考えていないようです。自治会員の意見を述べることが役員の仕事なので、「改善に向けての意見や提言は行っていく」と力強い姿勢を持っています。

但し強行路線は取りません。このあたりの考えはとても勉強になります。対立構造からは何も良いことは発生しません。仮に旧勢力と対立して新しい役員が勝ったとします。

対立する場合の支援者は、余程の悪事を働いているか信望がないかを除いて半分半分か60パーセントと40パーセントの支持率となります。現体制への不満が充満していない限り圧倒的勝利は少ないと思います。

余程の支持があるか、圧倒的人気を持っている人でなければ、自分たちの意見が通らないからと言って対立構造を作り、勝ち残ることは得策ではありません。相手を支持した半分の人が新しい体制の反対に回るからです。半分の人を反対派に追い込んでしまって、新しい体制で仕事ができる訳はありません。

新しい体制に移行する際に気をつけたいことは、現体制の役員さんにも支援をしてもらうことです。無名人が何かを実行する場合、敵を増やすことはすべきではないのです。自発的に身を引いてもらい、新体制を後見するような立場から支援してもらえることが理想です。そのためには対立構造を作り出して、退場してもらうことはすべきではありません。

対立からは新たな対立が生まれるだけです。北風を吹かせると今度は北風に襲われます。

それよりも自分の意見が半分、対立している相手の意見も半分取り入れることで新しい体制に移行させる方が、その後が上手く進みます。

相手をも包み込むような大きさを持って融和政策を取りたいものです。人は温かさと冷たさを択一する場合、温かさを求めます。情と理屈の択一の場合は情を求めます。対立する場合は温かくて情のある方法でゆっくりと話し合いを進めることです。目標は大河であり、小さな対立は小石のようなものです。大きな気持ちを持って流れを作りたいものです。