コラム
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2012/3/7
993    滝の詩

平成24年2月。ある方から詩人の島田陽子さんのことを教えてもらいました。平成23年4月23日の天声人語で紹介されていた滝の詩を紹介してくれました。

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滝は滝になりたくてなったのではない

落ちなければならないことなど

崖っぷちに来るまで知らなかったのだ

まっさかさまに

落ちて落ちて落ちて

たたきつけられた奈落に

思いがけない平安が待っていた

新しい旅も用意されていた

岩を縫って川は再び走りはじめる

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東日本大震災のことを述べた天声人語で紹介されていた詩ですが、一年後の今、復興に向けて日本が動き出すことを恐れていてはならないことを伝えてくれています。日本経済は再生の兆しがなく、わが国の財政再建の見通しもなく、円高に電力不足など、わが国を取り巻く環境は東日本大震災以降、厳しいことばかりです。もっと言えば歴史転換期を迎えていて、この一年はこれから先に進むために価値観を転換させる時期であるように感じます。この流れの向こうにあるものは絶望なのか希望なのか。滝の詩はこの先にあるものは希望であることを伝えてくれています。

歴史を遠くから見ると、一直線に上っているように見えますが、近くで見ると、つまり自分が生きている現代は一直線で上っていないことが分かります。少し前に進んだと思えば、外に落ちる、或いは横道に逸れることが多々あります。むしろ直線で進むことよりも前や後ろ、上に行ったり下に降りたりしながら、少しずつ前進しているのです。

そして歴史を振り返ると、過去から今までは一直線に上っていることが分かります。時分の生まれた時代から今までの歴史を線で結ぶと、右肩上がりの直線を引く人が大半だと思います。快適な社会と豊かな生活、そして必要なものは入手できる時代とそんな国は、現代の日本を置いて他にありません。

具体的に示すと私の生まれた昭和36年から平成24年までを線で結ぶとしたら、間違いなく一直線に右肩上がりに線を引きます。ある時代の方が快適、経済が豊か、そして欲しいものが手に入った、自由に生きられたと思うことはありません。歴史は紆余曲折があるとしても絶対に前進しています。歴史は虹と同じで、遠くなら眺めるとはっきりと見えますが、その中に居ると虹の存在は分かりません。

東日本大震災から復興を目指している私達は、そんな歴史の虹の真っ只中にいるのです。未来に向かう直線は見えないけれど、後世の人は間違いなく一直線に伸びている時代であったと評価してくれます。そんな未来に向かう歴史を生きているのが、作っているのが他の誰でもない私達なのです。