コラム
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2012/2/10
975    風花

平成24年2月9日。今年初めて和歌山県で雪が降りました。とても寒い一日のスタートで出勤途上の人は、この寒さを恨むこともあったと思います。寒さ厳しい時期に雪は歓迎されないものです。

そんな中、通勤途上の路線バスの中で素敵な会話が交わされていました。二人のやや年配の女性の会話です。

「こんな雪のことを何て呼ぶか知っている」。

「私は分からないわ」。

「こんな雪のことを風花というのですよ」。

時間にすれば少しの会話でしたが、とても素敵な会話です。風花の意味を知るとそのことが分かります。

風花とはウィキペディアによると、「晴天時に雪が風に舞うようにちらちらと降ること。あるいは山などに降り積もった雪が風によって飛ばされ、小雪がちらつく現象のこと。静岡県やからっ風で有名な群馬県でもよく見られる。

冬型の気圧配置が強まり、大陸から日本列島に寒気が押し寄せてくると日本海側で雪が降るが、その雪雲の一部が日本列島の中央にある山脈を越え、太平洋側に流れ込んできたときに風花が見られる」ということです。

寒い日特有のもので、冬型の気圧配置に押され日本海側の雪が太平洋側の和歌山県に降ったものです。和歌山県においては、雪が降ると寒くて寒くて仕方ないと思います。しかし雪という表現ではなくて、風花という言葉で今日の朝の風景を表現した場合、何と素敵な一日だろうと思います。同じ天候と気温なのに、雪と表現すれば寒くて仕事どころではないと思いますが、風花だと思うと素敵な一日だと思えるのです。言葉は不思議なものですし、日本人の感性の素晴らしさに感嘆します。

午前8時、風花の中を出勤できる喜びを感じますし、何となく、冬真っ只中ですが、風花という表現があるともう春の到来を感じられます。寒くても生命が目を覚ます季節が近いことを知らせてくれるようです。

風花が舞う朝は、和歌山県においては一年に一度見られるかどうか分からない光景です。

そんな素敵な一日を迎えられたことは幸せなことですし、幸せなスタートを切れた今日の日は気持ちの良い一日となります。

それにしてもバスの中で風花の話をしていた二人の感性は素晴らしいものですし、その会話を偶然に聴いて、今日の雪が風花と表現されることを伝えてくれる人の感性の素晴らしさに感動します。

最も寒い時期に春を予感させる贈り物が届けられました。モノトーンの寒さの中に色彩豊かな華を感じること。そして閉ざされた空間が広がるような感覚がありました。たった一つの単語が寒さに震える気持ちを転換させてくれました。人は言葉によって活き活きとしますし、言葉によってやる気になります。風花が心に春を告げてくれました。