コラム
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2012/1/25
966    改革の難しさ

和歌山市内の経営者から、改革というのは難しいという意見がありました。それは人の心理が変わるので組織改革は簡単にはいかないというものです。

例えば、今の組織形態に不満がある人が多数派になっているとして、その中から組織改革をやる気のある人を集めて新しい組織案を作ったとします。新しい組織案が完成し、経営者の立場からもやる気のある従業員のために「やってみよう」と組織改正をしたのです。

ところが数ヶ月も経つと経営者に批判の声が聞こえてきました。「この組織ではスピードが速すぎて考える時間がない」だとか、「組織改正までの準備期間が短すぎたので、ついていけない」などの批判です。

批判を声にしているのは組織改革を訴えた、やる気のある人たちだったのです。組織改正をする前までは、「今の時代に対応するためには、組織が古すぎて仕事のスピードが足りない」、「今の会社組織は時代に対応していないので、早急に改革を行わないと会社が危ない」などの意見を述べていたのです。その意向に応じた組織改正を実行したのにも関わらず、不満が批判に変わっただけなのです。人の心理は不思議なものです。現状維持だと不満があり、改革をすると批判に転じる場合があるのです。

そして組織改正に批判をする人が役員に文句を言いに来たのです。「仕事のスピードが速すぎるので対応できない人ばかりになっている。これを変えないと今までのような仕事はできない」という意見でした。

それに対して役員は、「組織改正をして不具合があるのならば社長に話して善後策を考えますが、単に仕事のスピードが速くなったのでついていけないというのは、個人の能力の問題かやる気がないかのどちらかではないですか。やってみて組織全体として機能しないのであればその批判を聞きますが、個人レベル問題で再び組織改正をすることはできませんし、その意見を受け入れることはできません」と対応したのです。

つまり自分の能力で十分な仕事ができるようになると、意思決定できない現状に不満を感じ、意思決定するために仕事の処理のスピード化を図ると、自分の仕事の判断に自信がないので批判に変わるのです。どちらにしても会社に対して不満か批判をすることになるのです。

不満ばかりの人は体制が変わっても不満が批判に変わるだけです。現状に満足しないで前向きな仕事をしている人は組織改革を支持し、新しい組織に対応するように仕事のやり方を工夫するものです。そこにあるのは、より満足したい気持ちと、新しい組織による仕事への期待だけです。

不満を聞いて解決を図ろうとしても仕方ありません。また不満が満ちてくるだけです。それよりも満足度を高めようとする意見は聞いて対応すべきものです。現場の意見や仕事のプロセスを考えた上での改革案の提言は検討に値しますが、不満の塊を受け止めて対応しても、また不満か批判の対象にされるだけです。口先ではなく実行している人かどうかを見極めて、その意見や依頼に対応したいものです。