コラム
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2012/1/19
961    愛嬌と運

元PHP社長の江口克彦さんと懇談した方から、松下幸之助さんが松下政経塾を設立した当時の話を伺いました。昭和55年4月に松下政経塾を設立したのですが、その時、松下翁は85歳。江口さんが「松下さんが校長ですね」と尋ねたところ、「私は一期生の塾生として勉強したい」という答えが返ってきたそうです。何歳になっても向上心をなくさない心意気を感じます。

そして一期生の面接は松下翁が直接行い、一期生26名を合格させたのです。(結果的には3名が入学を辞退しています。)応募者は907名だったのですが、松下翁には合格の基準が明確にあったのです。

その合格の基準を満たした人が入学を許されたのです。その合格するために必要な基準とは何かを教えてもらいました。

一番が意外とも言えますが愛嬌だったのです。愛嬌を最重視したのです。政治家は言葉が武器ですが、言葉の前に愛嬌、つまり自然なスマイルが必要で、スマイルのない人の言葉は聞いてくれないからです。言葉の前にまず愛嬌があるのです。男は愛嬌で、愛嬌が将来伸びるために持ち合わせているべき天性なのです。自然なスマイルは人を和ませますし、安心感を与えます。自然な笑顔は何者にも勝ることを信じることです。松下翁はまず愛嬌のある人を選びました。

二つ目の条件は運だったそうです。運のある人と言っても先天性の運と後天的な運の二通りがあり、後天的な運を持つ人を選んだようです。

先天性の運とは、生まれながら持っている運で、空気のように持って生まれたものです。それに対して後天的な運とは、生きていく中において自分で創り出した運のことを言います。生き方、考え方、心の持ち方などによって運は変わります。後天的な運とは正しいこと、きれいなこと、正義を貫くことなどから身につく運なのです。

このように自分で獲得した運を持っている人を合格させたのです。

基準としては多くの人が思っていることと違っているかも知れませんが、経営の神様が多くの人との出会いや経験の中から見つけ出した人を見抜く秘訣ですから、知識や話術などよりも高い資質として捉えるべきです。つまり学んで習得できる技術力よりも、人間力を人物評価の基準としているのです。

仕事の場面で愛嬌を忘れていませんか。人と接する時はスマイルを持っていますか。困難に直面した時は、困った表情よりもスマイルが正解なのです。スマイルがあって言葉がありますから順番を間違がわないように。

そして運を掴むための努力をしていることが大切です。運は後天的なものが先天性のものよりも勝ることを知れば、日々の努力が運を積んでくれていることを楽しめます。楽しめる努力は続きますから、困難を切り拓いている自分は運を味方につけていることを信じながら努力を続けたいものです。

愛嬌と後天的な運を身につけると、今よりも望みが高いところに届きます。