コラム
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2012/1/5
952    適度なストレス

和歌山県の特産品はみかんです。最近のみかんは糖度が高く、消費者の好みにあった商品へと更に進化を遂げています。単に糖度の高いみかんができているのではなく、和歌山県内の生産農家の取り組みが市場から評価を得ているのです。

その秘密を少しだけですが聞かせてもらいました。雨の少ない年のみかんはおいしいと言われていますが、水分が不足することによるストレスは、糖度の高いみかんに欠かせないものだそうです。 

みかんの木は実を生らす時に、水分を発する時期があるようです。恐らく果実を維持するために水分を根から吸上げようとするのです。しかし、みかんの木が水分を欲しがるこの時に水分を与えると、みかんの実の糖度が低くなり、食べると水っぽくなってしまいます。ですから生産農家はこの時期に根から水を摂取できないようにしているのです。そうするとみかんの木は必要な水分が不足するため果実を小さく保ち、水分不足から防衛しようとします。そのため果実は小さく引き締まり糖度は高くなります。その結果、消費者に歓迎されるみかんとなるのです。

つまり自然のままにしておくと水分の多い味がしますが、人が工夫することによっておいしいみかんが誕生するのです。しかし、みかんの木にとって必要な時に水分が採れないことはストレスになります。適度のストレスがあることで生命を維持しようとする防衛力が働くのです。

人も同じように感じます。ストレスは病気へとつながるものですが、適度のストレス、良い緊張感があることで仕事が進みますし人は成長します。ストレスのない仕事、生活の中に浸っていると人は成長することなく、中身のない人になりそうな気がします。

仕事は適度なストレスがあることでやり方を考えます。この場合のストレスとは少し難易度の高い仕事に携わることです。また人間関係においても適度なストレスが必要です。この場合のストレスとは同じ人とのつきあいではなくて、違う業種の人やレベルの高い集団に入り会話をすることです。

このように適度なストレスの中にいると最初は居心地が悪いと感じますが、その環境に適合するようになると、高いレベルの仕事や違うステージの人間関係ができるなど、これまでと違う環境にも対応できるようになります。違う環境においても対応できること、それが人として成長することなのです。同じ環境の中にいて成長することは困難です。それは刺激が少なくて済むのでストレスを感じないからです。

そう思うと仕事の刺激となるストレス、違う人との交わりを求める緊張感のあるストレスなどが人にとって必要なのです。全く摩擦がないと鉛筆と紙があっても書けないように、ストレスは人として成長し何かを残すために必要なものなのです。

自分では入手できなければそれを我慢して、自分の力で獲得できるように働くことはストレスですが、それを達成する喜びはみかんが自らの糖度を高めるように自分の実力として蓄えられます。適度なストレスも、自己を高めてくれると思うと楽しみに変化します。