コラム
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2011/12/22
948    カレンダー

年末に必ず訪ねる家があります。Kさんの自宅なのですが、いつも私が持っていくカレンダーを楽しみに待ってくれているのです。平成23年12月に伺った時も「とても可愛いカレンダーですね」と喜んでくれました。Kさんの凄いのは、役割を終えた前年のカレンダーを捨てずに保管しておいて、それぞれの月に描かれている図柄を活かして封筒を作成していることにあります。表紙の図柄も可愛いので使えるため、1年間でオリジナルの封筒が13枚完成するのです。それらの封筒は季節に応じて差し出すことにしています。

完成した封筒は元カレンダーとは思えないデザインで、受け取った人からも好評だと聞いています。元カレンダーは封筒として蘇えり、受け取った人はKさんからの手紙と封筒を大切に保存しているのです。カレンダーがKさんによって生命を吹き込まれ、そして永遠に近い命を授かったようです。1年間限定の役割のカレンダーが長く人の近くでいられることに幸せを感じていると思います。

同じ日、畜産家の方からの話も聞くことがありました。牛や豚、鶏の飼育をしている畜産農家で育て方によって食する時の肉の味が違うことを知りました。食べ物や栄養、飼育環境によって肉質は左右されることは理解できますが、もうひとつ肉質に影響を与えるものがあるそうです。それは愛情を持って飼育することなのです。鶏などに対して、優しい言葉を掛けて、優しく接すると、その鶏の肉は柔らかくて美味しくなるそうです。逆に鶏を怒ったり、売り物だという態度で接していると、その肉は硬くて不味くなるようです。

どちらの鶏も結局食べられるのですが、育ててくれた人に与えるものが違っているのです。愛情を持って育ててくれた畜産農家に対しては、自身の命をそれまで可愛がってくれたお礼を込めて美味しい肉として提供してくれます。美味しい肉を出荷してくれる畜産農家は評判になりますから、市場では高い値段をつけてくれます。愛情を与えた結果が価値としていただけるのです。逆の場合は言うまでもありません。不味い肉を市場に出し続けても、やがて取引は成立しなくなります。動物も人の愛情、人が声を掛けることによって性質は違ってくるのです。

植物も自動車でも同じだという人がいます。自動車を移動手段としての自動車だと思っていると年月の経過と共に性能は衰えますが、例えば、自動車に名前をつけて日頃から名前を呼んで乗っていると、いつまでも傷つかないで気持ち良く乗れると聞くことがあります。

人間と接するものは人の心が分かるようです。動物、植物、自動車も大切に思うと大切に思って接してくれたお返しをいただけるのです。カレンダーも同じだと思います。大切に扱ってくれた人に対して、カレンダーもお礼をしたいと思うのです。平成23年の毎月を飾ってくれたカレンダーは、平成24年になるとその役割を終えますが、Kさんの自宅で飾られていたカレンダーは1年間の愛情を忘れないで、封筒に姿を変えて誰かの家に届けられます。その封筒を受け取った人は、Kさんの愛情と感謝の気持ちを同時に受け取っているのです。カレンダーもその役割を知ってKさんの代理を演じてくれるのです。