コラム
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2011/12/14
942    気づき

とても素敵な話を教えてもらいました。ある人が家族旅行をするために、和歌山市内の旅行会社に行きました。順番待ちをしている時間があり、先にカウンターにいるお客さんと旅行会社の窓口の女性との会話が聞こえてきたのです。自然に聞こえてきた会話は次のようなものでした。

お客さんの依頼。「以前に予約していた受験の宿の申し込みですが、キャンセルしたいのでお願いいたします」と言うものでした。この依頼を聞いた場合、通常であれば嫌な顔をして、「どうしてですか」や「いまキャンセルすると手数料がかかりますが、それでも宜しいでしょうか」などの対応が考えられます。

ところがこの事例では違ったのです。

旅行会社の女性の対応は次のようなものでした。「おめでとうございます。良かったですね」という答えでした。お客さんは嬉しそうな笑顔で「ありがとうございます」と答えたようです。短い会話ですが、心の通った素晴らしい会話です。

この時期に受験の宿をキャンセルすることが、推薦入学願いを提出していた大学に合格したことを連想できた女性社員の気づき、感性は素晴らしいものだといえます。人の能力とはこのようなものです。会話の中から気づきがあること、或いは相手の依頼の中に隠されたものを読み取れることが能力なのです。同じ仕事をしていても、能力のある人が対応すればお客さんは感動し、満足度は高くなりますから次につながります。ところが感性の鈍い社員が対応すれば、お客さんを怒らせる結果になり兼ねないのです。もし「キャンセル料が発生しますが、それで宜しいでしょうか」などの応対をすれば、このお客さんは二度とこの旅行会社の窓口を訪れることはないのです。

それどころか、この会話を聞いていた人(私にこの会話を教えてくれた人)は、この会話によってこの旅行会社に好印象を持ち、忽ちファンになってしまったのです。一人の女性社員の対応によって、二人のお客さんをこの旅行会社のファンにさせ、永続的な顧客にしてしまったのです。

窓口社員の応対は会社の顔となります。窓口社員の対応如何によってお客さんをファンに昇華させてくれますが、逆の対応をすることによって他の旅行会社に流れることもあるのです。気づきは感性のものです。感性のある人の仕事は気持ちの良いものです。

ところで素晴らしいお客さま対応をした女性社員ですが、実はベテラン社員ではなくて入社一年目の新入社員だったのです。新入社員ですから経験はありませんし、秋のシーズンを迎えるのも初めてのことだと推測できます。初めての経験なのに、ベテラン社員でも出来ないようなお客さま対応をしているのです。

一人の社員の素晴らしいお客さま応対がファンを獲得し、そしてその話を聞いた人も、その旅行会社に好印象を持つことになります。この旅行会社は潜在的顧客をも獲得したのです。感性を持ち機転がきくことは能力です。お客さんの立場になって応対していれば、相手の気持ちに気づくことは可能です。気づける能力を大切にしたいものです。