コラム
コラム
2011/12/5
935    輝ける時間

和歌山県でフラメンコ教室を主宰しているのが森久美子先生です。何度かコラムに登場してもらっているので経歴は割愛しますが、日本中にフラメンコの魅力を伝え、そして和のフラメコンを集大成したいという強い希望と夢を持っています。目標は3年以内に和のフラメンコを東京で公演し成功させることと、スペインでの和のフラメンコの公演、そして紀州の魅力をスペインに紹介することです。和歌山市の夏の風物詩である紀州踊りをスペインのお祭りに参加させて日本文化との交流を図ることを目指しています。大きな夢ですが、いずれも実現可能なものばかりです。あと3年で目標を実現させること。それを達成したら後輩に道を譲り、自らは後方で支援する役割に回りたいと考えています。

和歌山県でのフラメンコをゼロの状態からスタートさせていますから、これまでの道程は激しいものだったようです。フラメンコを鑑賞する、踊ってみるという文化がないところから始まり、個人レベルからのスペインとの交流を積み重ねて今に至っています。

「何故。ここまでやろうとしているのだろうと思うことがあります」と話してくれましたが、ここまでの道は平坦な道ではありませんでしたし、これからも問題が山積しています。

後継者の問題、舞踊団を目指して本格的にフラメンコを習う人の養成、フラメンコ文化を定着させるための会員の拡大など、レッスンよりもプロデュース力が必要な時期に差し掛かっています。

森先生のところで活動しているフラメンコ舞踊家の皆さんに伝える言葉があります。厳しい練習に耐えて舞台を踏んでいる皆さんに対してのものです。

人生で生き甲斐を持って活動している人は多くはありません。好きなことに打ち込めている人も多くはありません。人生の中の時間、それも瞬間かもしれませんが、その瞬間に輝きを放てるものがある人は幸せです。フラメンコ舞踊家の皆さんは毎年舞台に立つことが可能です。それを目標にして練習に励んでいる。目標に向かって練習している日々、そのことが輝ける瞬間であり、貴重なものなのです。自分の好きなことで、自分が練習をしてきたことで舞台に立てる機会を持っている人は少ないのです。人生の中で輝きの瞬間を持っている人は幸せな人です。輝きの時間を持てている皆さんには、今のこの瞬間を大切にして欲しいと思います。

人生は瞬間に過ぎ去ります。ですから瞬間を切り取れる表現、瞬間を凝縮できる舞台があることは素晴らしい人生だと思います。20歳代の人にとっても、50歳代の人にとっても、フラメンコを踊っている瞬間は輝きを放っています。そんな時間を持っていることを大切にして欲しいと思います。

この言葉は森先生からのインタビューに答えたものです。日本文化の中ではマイナーかもしれませんが、自分を信じて、そして明日への期待を感じてレッスンに励んでいる皆さんは躍動しています。身体も心も躍動していることを感じます。

和歌山県にいて一流になる。和歌山県にいながら本物に触れられる。和歌山県のお客さんに一流の舞台を見せる。そんな夢を描きながら活動している姿に人生の輝きが見えます。