コラム
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2011/11/22
928    ふたつの卒業式

子ども達に伝える力のあるメッセージです。「卒業式にはふたつの種類がある」という話を聞きました。元学校の先生の言葉です。ふたつの卒業式とは何なのか分からなかったので、二通りの卒業式について尋ねました。答えは次の通りです。

ひとつは「この生徒がいなくなったら寂しいな。もっといて欲しかったけれど、祝福して送り出したい。困ったことがあればいつでも学校に帰ってきたら良い」という気持ちで送り出してもうらえる卒業式です。

もうひとつは「この生徒がいなくなったらホッとする。早く卒業してくれたら清々する」と思って送り出される卒業式です。

同じ卒業式でも全く意味は違います。恩師や周囲の人から心からお祝いをしてもらえる卒業式は、温かい気持ちで次のステージに進むことができます。将来への道筋が明確に描かれているようなイメージがあります。

それに対して出て行ってくれた良かったと思われる卒業式は冷たいものを感じます。後ろにも戻れないし、将来が閉ざされているような感じがあります。

しかしふたつの卒業式の演出方法を選ぶのは生徒自身なのです。先生が、温かい卒業式にするか冷たい卒業式にするかを決めている訳ではないのです。日常の生徒の行いが卒業式のあり方を選択しているのです。明るく学校に来て同級生や先生と仲良く向上していった生徒は卒業を祝福されます。勉強ができてもできなくても、自分の力を出し切って3年間頑張り通した生徒は祝福されるのです。

しかし同級生をいじめたり、授業の邪魔をしたり、頭髪を茶色にしたり、つまり周囲に迷惑をかける生徒は卒業を歓迎されることになります。先生や周囲から何度も注意されても全く聞かない、聞く態度にならないようでは、喜んで送り出してもらえないのです。

先生が茶髪や学校での態度を注意するのは見込みがあるから、その生徒に期待しているからです。しかし外への期待感は続くものではありません。何度も同じことを言っても聞かないようでは、その生徒への期待感はなくなります。

そして先生は社会の厳しさや周囲との協調することが生きていく上でどれだけ大事なことかを知っています。卒業するまでに言動を正して社会で通用する人間に成長させたいと思って叱るし、励ますのです。社会へ出る前の修業期間の生徒達には、先生からの教えから学び、そして祝福されながら卒業式を迎えて欲しいものです。

大人も同じです。人事異動で職場を去る時、祝福されると同時に寂しがられるのか、それとも転勤してくれて良かったと思われるのかに別れます。そこで今までの実績と周囲の評価が分かります。

人は限られた時間の中で偶然一緒に過ごす人に囲まれます。その人たちの心にいつまでも残る人でありたいものです。いなくなって寂しいと思われたら、その人はその場所で真面目に、人に親切に、そして仕事の成果を挙げていたのです。あなたは、ここを去る時、どちらの卒業式で送り出して欲しいと思いますか。