コラム
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2011/11/18
926    お願い

「いただいたコーヒー一杯のお礼の気持ちを忘れないでいます」。Iさんとはそんな言葉から会話が始まりました。恩を受けた人に対して依頼しなければならないことがあると、「自分が何をお返しできるのかを考えます。依頼をするということは、それに対するお礼をしなければなりません。今の自分に御礼ができる実力があるかどうか。その人に何の助けになるのかを考え、もし何も返せないのであれば。お願いはしないことにしています」という考えを披露してくれました。

頼まなければ損のように次々に依頼をする人がいます。気をつけなければならないのは、いくつかの案件を聞いて対応している間は良いのですが、「もう勘弁してよ」と思うような依頼が襲ってきます。それは自分が利益を得る商売絡みの依頼でこの地域全体の利益にならないような依頼です。それを断ると大変なことが起きます。今まで支援してきたことを忘れ一転して攻撃に移るのです。それは常に決まった台詞で批判してきます。

「あの人に頼んでも何もしてくれない」。「やるだけの実力がない」という定型の台詞です。10の依頼を聞いて対応してきたのに、私的な1つのことに対応をしなかったことから批判が始まります。一体、どんな性格をしているのだろうと思う場合があります。

そんな人が存在している中、Iさんの崇高な心掛けと会いました。「私は滅多に何かのお願いをするための電話はしません」、そして「お願いの電話ばかりしていると、その内に嫌がられます。Iさんの電話は頼みごとばかりだ」と思われると、相手は会うことを避けるようになります。それは人間関係を壊すことになるのです。

お願いをするということは、「その相手に自分が何かを返せる自信がある場合に限ります。実力のない人が誰かを頼ってばかりいると、誰からも相手にされなくなるのです。そんな人をたくさん知っています」と話してくれたように、人と人の関係は基本的に同等であるべきです。一方だけが利益を得る立場にばかりいる関係は早晩破綻を招きます。

 

Iさんは自身の人生経験から「近寄ってきた相初対面の相手は疑ってかかること」と教えてくれました。信頼関係ができてから交友を図るべきで、本性が見えるまで信頼してはいけない、そして「利用するために近づく人や、自分が利益を得ようとして話を持ちかける人がいますが、それを見抜く視点を持っておきなさい」と教えてくれました。

日本社会は良い人が多いのですが、中には悪人もいます。近づいてきた目的は何か、誰が紹介者なのかが、相手を見抜く鍵です。私的な儲け話であれば話に乗ることは危険です。

信頼できる人からの紹介であれば依頼を受けても大丈夫ですが、そうでない人からの紹介であれば即座に話に乗らない方が良いのです。

「私に近づいてくる人は多いのですよ。たいしたことはありませんが、長い社会人生活で得た人脈が全国にあるからです。○○さんに会いたいので、私から紹介してもらいたいという依頼は多くありますが、相手によっては紹介しません。人を紹介することは責任があるからです」。確かに誰から紹介されたかで、その相手の信頼度は違ってきます。社会で信頼されている人との交友関係を持ちたいものです。