コラム
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2011/11/17
925    情報の窓口

ある会社の課長が飛び出してきました。「課長、頑張っていますね」と声を掛けたところ、「今から○○へ行くところです。同じところに行っていても新しい販路は開拓できません。情報の窓口を切り替えていかないと広がりません」と答えてくれました。

その通りです。同じところにばかりに行っていても新しい人脈や仕事は増えません。未開拓の業種や付き合いのない会社に行かなければ販路は広がらないのです。

しかし人は保守的であり同じところの方が居心地は良いのです。行き慣れた訪問先を訪ねることにストレスはありませんが、知らない会社に飛び込みをすることはストレスになります。精神的に極力ストレスは避けたいと思いますから、どうしても訪問先を開拓することは難しいのです。

ところが同じ業態の人とばかり付き合う、同じ会社の人とだけ話をするようになると新しい考え方や価値観が開けません。同じ会社内でいるということは同じ情報を受け取っている可能性があります。会社内の情報は頭が眠っていても受け取れますから安易です。しかも業界用語は分かっていますし、同じ価値感で書かれた文書、文体で書かれていますから読み易いのです。読み易い文書は頭に入ってきますから、その情報が基礎として取り込まれます。

一度先入観として植え付けられると、その価値観を覆すことは容易ではありません。同じ環境にいるとその価値感を覆す要素がないのです。周囲の人とは同じ意見であり、与えられる情報も同じ価値観に基づくものだからです。

だからこの課長がまちに飛び出して行ったように、違う業種の人や今まで深く付き合ったことのない会社を訪問して、情報の多様化を図り、違う価値観に触れることが大切なのです。情報の窓口を変えることは判断材料が増えることになりますから、モノの見方を多様化させることになります。

判りやすい事例を取り上げます。大阪秋の陣の争点である大阪都構想に関して、賛成する人と反対する人の意見を聞いてみる、情報を取り入れてみるとそれぞれの長所と短所を知ることができます。両方の意見を聞いた上で、では自分はどう判断するのかを考えると良いのです。

一面だけからの情報で物事を判断することは危険ですし、賛成、反対のどちらの意見にも利点はあります。どちらかを選択した結果、世の中がどう進むのかを考えて自分だけの結論を導くことが必要なことです。どちらを選択しても変わらないと判断したならば、その政策は意味のないことになります。選択した結果が何も変わらないようでは、選択することも決断することも必要ないからです。

ただ多くの場合、多くの人が選択した結果に基づいて社会は動き始めます。自分の価値感に近いモノを選択する習慣を身に付けておかないと、同じ情報や変わることのない価値観に縛られていると変化に対応できなくなります。情報の受け取り先を多様化させること、まちに飛び出すことは、変化に対応するために取っておきたい行動です。