コラム
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2011/11/11
921    挨拶と感謝

水泳教室で指導している水泳コーチの話です。水泳を習いに来る子ども達で伸びるのは目標タイムを意識している子どもだそうです。ただ練習を繰り返すのではなくて、常にタイムを意識して練習を行っています。タイムを意識して泳ぐとそのタイム前後で泳ぎ切ることができ、意識していないと目標タイムよりも遅くなるようです。

目標タイムを達成できたら少しずつ目標タイムを縮めて設定し直します。その繰り返しで早く泳げるようになるのです。昔の子ども達と比べるとタイムは早くなっています。昔と比べてより早く泳げる指導方法が確立されていること、習いに来る子ども達の意識も高くなっていることなども要因ですが、一番の要因はタイムを常に意識させる指導を行っていることです。

それに加えて、伸びる子どもに共通したことがありますが、技術ではないところに注目です。ひとつは挨拶ができることです。コーチや他の子ども達、見に来ている保護者に自分から挨拶できる子どもは伸びていきます。

もうひとつは、感謝の気持ちを持っていることです。水泳が習えているのは誰のお陰なのか知っています。月謝を支払ってくれている両親、指導してくれているコーチの存在、練習を支えてくれているスタッフへの感謝など、周囲の人に感謝の念を抱いて練習にきています。

挨拶ができ感謝の気持ちがあると早く泳げるようになっていきます。水泳は精神面の強化も必要で、決して技術だけの勝負ではないようです。精神面の強さとは相手に勝つことを意識するだけではなくて、泳げることに対しての感謝の気持ちを持っていることなのです。強さとは複雑な要素が組み合わさってできているものなのです。

ですからコーチに求められるのは精神面を鍛えることです。泳ぎ方を教えるだけなら選手に進歩はありません。体力強化と技術指導は必要ですが、一定のレベル以上になるとそこからはこのような精神面の強化が必要になるのです。

ですから優れたコーチはタイムが遅くても叱ることはしません。ところか挨拶をしなかったり、感謝の気持ちを忘れている場合は叱り付けます。

つまり選手を育てるということは人間形成を行っていることなのです。選手として一人前になることは、社会に出ても通用する人を育成していることなのです。水泳を通じて人間力を備えること、それを意識しているのです。子ども達もやがて大人になります。競うことを学び、自分から挨拶ができるようになる。そして周囲の人への感謝の気持ちを感じることができる大人になることは、水泳選手として大成することよりも素晴らしいことです。選手として活躍できる時間よりも、引退してからの人生の方が長いからです。仮に選手として大成しなかったとしても、スポーツを通じて人格形成ができていたら、社会で通用する人になっています。もしかしたら大好きな水泳のコーチになれるかも知れません。

人は誰でも性格が悪くて仕事のできる人よりも、性格の良い人と一緒に仕事をしたいからです。挨拶と感謝の気持ち。今日から始められることです。