コラム
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2011/10/6
900    緊張感

ランニングクリニックの中で質問がありました。高校一年生からの質問です。

「試合になると緊張するのですが、緊張をなくす方法を教えて下さい」という質問です。

短距離走の試合ですから、その緊張感は理解できます。多くの人は小学校や中学校の体育祭での50メートル走やリレーの走者になった時の緊張感を覚えていると思います。公式な陸上大会でのスタート時における緊張感はその比ではない筈です。その緊張感を取り除くことができるのか。一人目のプロのコーチからの回答です。

「折角、練習を続け選手となり、公式試合に出られるようになったのだから、試合を楽しむことに気持ちを向けたらどうでしょうか。必要以上に緊張をすると試合を楽しめなくなります。練習の成果を試す機会が訪れた。または好きな陸上で公式試合に出場できたのだから、結果は関係ないので走り抜けよう、と思うことが大切です。楽しもうと思うことで緊張感は少なくなります」。

確かに、人は同時に相反する二つの感情を持つことは困難です。緊張していると楽しめませんが、楽しみたいと思うと緊張する間がなくなります。試合のスタートの瞬間はそんな簡単な精神状態ではありませんが、まず楽しむことを気持ちの中に抱きたいものです。

二人目のコーチの回答です。「緊張するのはまだ自信が芽生えていないからかな。一年生だから上のレベルと戦うことは緊張するものです。試合に負けても良いので、その結果を踏まえて、また練習に時間を費やすと良いと思います。練習時間が自信になり、それが試合前の緊張感を小さくしてくれます。緊張感を完全になくするとこはできませんが、高すぎる緊張感は試合に影響しますが、小さな緊張感は試合に好結果を運んでくれます」。

緊張感は初めての出来事の時に芽生える精神状態です。経験を重ねると緊張感は小さくなりますから、経験を重ねること、そして練習時間を積み重ねることが克服する方法です。

しかし全く緊張感がないことは問題です。試合という緊張感がある場面の方が力を発揮できるのです。陸上の場合、トップレベルの世界陸上やオリンピックの舞台で、大会記録や世界記録が更新される場面が頻繁にあります。世界記録の更新は時々されているように思いますがそうではありません。緊張感の高い大会の方が実力を超える記録が生まれ易いのです。勿論、身体や精神のコンディションを大会の決勝に合わせてきたことも要因ですし、緊張感を感じることで精神力が高まることも要因です。

世界一の大会の決勝で戦っているという緊張感による精神の高まりが、新しい記録を達成させるのです。緊張感のない練習よりも、緊張感のある大きな試合で記録が生まれるのです。そう思うと緊張感を感じられる大会に出場できるだけでも幸せなことであり、自分の記録を伸ばせるチャンスなのです。試合に出ることが目標なのに、その試合に出場したのに緊張し過ぎて力を発揮できないことは勿体ないことです。

緊張感は自分を高めてくれるために必要な経験であり、緊張感を感じられる舞台に立てることは幸せなことだと、それを喜びに転換して欲しいものです。それは人生の重要などの場面でも同じなのです。