コラム
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2011/10/4
898    褒める解説

高校野球関係者の話です。高校野球の解説について二つの方法があると聞きました。ひとつは褒めること、もうひとつは批判することです。その違いは次のようなものです。

あるイニングで二死満塁の場面。打者が難しい初球を打ち、強いあたりのショートゴロに倒れました。絶好のチャンスでしたが無得点に終わりました。

前者の解説の例。ピッチャーが難しいところに投げましたね。球威が優っていたので強い当たりでしたがショートゴロに打ち取りました。見事な投球でした。そしてショートも良く守りました。抜けていたら逆転の場面でしたが、最初の一歩の判断が素晴らしかったですね。見事な守りです。

後者の解説の例。簡単に初球から打ちましたね。チャンスだということが分からなかったのでしょうか。難しい球に手を出した打者の姿勢が分かりませんね。それにしても外角の難しい球を無理に引っ張るバッティングはいただけませんね。状況判断、バッティングの技術もできていませんね。

如何でしょうか。違いは明らかです。前者は守ったチームに注目して、守りきったことを褒めています。後者は攻撃のチームに注目して、打った打者を批判しています。どちらの解説が心地良く感じますか。多くの人は褒める解説に好感を持ちます。人は自分が批判されることは好きではありませんし、全力を尽くしている人に対する批判の言葉は聞きたくないものです。

褒めることは難しいことではありません。褒める対象に対しての解説をすれば良いのです。この場合、投げ勝った投手と守りきったショートのプレイを解説すれば、自然と褒める言葉になります。後者は攻撃側に視点を置いていたので、打者を批判する解説になりました。解説は常に褒めるところを見つけて言葉で表すと良いのです。

更に興味深い話になりました。どんな場面でも批判から入る野球解説者は、やがてテレビ出演の依頼がなくなったそうです。選手の気持ちに立つと当然のことですし、テレビを見ている人にとっても批判の解説は聞き苦しいからです。

それに対して選手を褒める解説者は人気があるようです。勝負は勝つか負けるか、安打か凡退かです。勝ったチームを褒め、打った選手を褒め、そして守りきった選手を褒める解説は気持ちが良いのです。逆の場合は書くだけで気分が悪くなります。負けたチームを貶し、凡退した打者を責め、エラーした選手を批判する。如何ですか。文字を目で追うだけで嫌な気分になります。

仕事でも生活の場面でも同じです。良くできた仕事を褒め、良い行いを褒めるべきです。褒められると人は気持ち良く次の仕事に取り掛かります。批判されると、そのことが心に残り、次の仕事に向かう気持ちが萎えてしまいます。失敗した仕事でも良いところはある筈です。少ない良いところを褒めた後に、失敗した原因を取り上げて正すことが、次に向かわせる場合の正解です。誰でも、批判を聞かされることは気分が良くないことを分かった上で、褒めることから入りたいものです。