コラム
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2011/9/30
896    きのくに青雲高校

平成24年春に和歌山県立きのくに青雲高校が誕生します。この学校は青陵高校と陵雲高校のふたつの高校を統合した結果、誕生する高校です。新しく誕生する高校を訪れ、青陵高校の校長先生に案内してもらいました。校長先生から「いつもホームページを見ていますよ」と会って直ぐに声を掛けてもらいました。心が止まる嬉しい一瞬です。

青陵高校の校長先生との出会いは、ふたつの高校を統合する計画が発生した時に遡ります。青陵高校のOB会から、「突然の統合話かが出てきた。OB会としては反対する。統合する理由が分からないし、母校が無くなることは納得できない」という意見があり、青陵高校に事情を伺いに行ったのがきっかけでした。

本当に熱意のある素晴らしい校長先生で、「この人に任せておけば大丈夫」という予感がありました。約1年掛けて高校とOB会との意見がまとまり、統合することになりました。

青陵高校OB会が統合に難色を示したのは理由があります。この高校は定時制高校で、その昔、働きながら高校に行く社会人学生がとても多かったのです。和歌山市内で就職をして、仕事を終えた後の時間に勉強をする青雲の志を胸に抱いた社会人学生達です。今は会社勤めを定年していますが、経済的に厳しい家庭環境の中、中学校を卒業して社会に出る、そして勤労学生として勉学に勤しむ姿が、この高校にあったのです。そんな思いが詰まった校舎と校名が消えることは、青春時代が消えるような痛みがあったのです。

「働きながら高校に通うのは大変だったけれど、みんな向上心があって楽しかった。仕事も勉強も充実していました」と話してくれたOBさんの声が蘇えります。

確かに校名は消えますが、長年の悲願であった正門が新しく設けられることが決定し、新しい正門前の体育館に校章が掲げられることになりました。そして新しく完成した体育館には青陵高校と陵雲高校の校歌が掲げられています。その間にきのくに青雲高校の校歌が掲げられる予定です。校名が変更となりますが、求めてきた学習環境は充実することになります。

その昔、青雲の志を抱いて校門を潜った学生達の思いが、きのくに青雲高校という校名になって生命を吹き込まれたような気がします。今では定時制高校といっても夜間の勤労学生の姿は減少しています。むしろ昼間部に生徒が集まっているくらいで、高校の姿も変わりました。昼間は働いて夜間に勉強に来る社会人学生は少なくなっているようです。

それでも、定時制は基本4年で卒業ですが、単位数を早く取得できるため午後からも授業を受けられる制度があり、早い卒業を目指している若い生徒が午後からも授業を受けている姿がありました。ここでは制服はなく、自由な姿で授業を受けていました。その姿は、夜間で学んでいた勤労学生と同じように映りました。今も昔も、置かれた環境に負けないで勉強を志している生徒がいることに未来を感じます。

環境に埋没するのではなくて、自らから未来を掴み取るための勉強をしているのです。校名は変わりますが、両校から一文字をとった歴史を引き継ぐ校名となっています。きのくに青雲高校は、一年目から涙と苦学の歴史を背負った学校として開校します。

この統合問題に関わった一人として校長先生との会話は嬉しく感じました。統合問題は、どうしても反対意見、要望が多く出されます。そして納得する形で解決することは簡単ではなく、信頼関係、そして要望を真摯に受け止める姿勢、そして統合ありきではなくて、OB会を始めとする関係者の意見を聞き入れる度量も必要です。

この統合問題の経緯の一部は過去のホームページにも掲載していますが、それをきっかけとして校長先生が見てくれるようになったと思います。そして統合問題ではなくて、他の活動や取り組み内容に関心を持ってくれていることに感謝しています。校長先生の一言が励みになります。人の励みになる言葉とは、相手の行動を知り、その行動を知っているよというメッセージを添えたものです。人から関心を持ってもらえることが大きな励みになります。