コラム
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2011/9/13
887    一流の継続の力

歌手の山下達郎さんのコメントです。「どれだけ魂の叫びが素晴らしい才能の持ち主であっても、それだけで100曲の曲を作ることはできません。音楽の世界は才能だけで生きていける甘い世界ではありません。歌の表現などの勉強を継続させることが必要なのです」

才能の持ち主でも天性のものだけで生き残れる世界はありません。才能はあくまでスタート地点であり、継続は前に歩く力です。スタート地点が少し前であったとしても、毎日の継続の力の前では、それほど大きなアドバンテージとはなりません。400メートルのスタート位置のようなものです。外側のレーンのランナーが前に出ているように見えても、実はそうではありません。これと同じようにスタートする時は同じような位置にいるのですが、始める時は先に始めている人がずっと先に進んでいるように思うのです。錯覚に惑わされないように、継続する力を身につけましょう。

一般的に才能の塊が集まっているように思える音楽の世界でも、才能がすべてではないのです。それに対して私たちが生きている社会は、誰でも何かの役割を持ち、仕事や地域社会で活動しています。何の活動も、何の役にも立っていない人は、それほど多くはいない筈です。だったら、その地域の分野で一番を目指すことも可能です。

プロの仕事は人に気付かれないように終えることです。トイレがその例です。時々、訪問した先の会社のトイレを使わせてもらいます。殆どの場合、快適にトイレを使用することができます。何も気づかないままトイレを使えるということは、誰かが常にトイレをきれいに保つために掃除をしているのです。匂いがする、汚れているトイレだと使用した人は気付きます。使用した人に、仕事相手に不具合を気付かれるような仕事はプロの仕事ではありません。きれいだとか、快適だとかなど、何の疑問も感じさせることなく終わらせるのがプロの仕事です。

もう一歩進むと、鏡の傍に季節の花を添えておく、心が和むキャラクターを何気なく置いておくことで、使用した人が感謝するようになります。何も気づかせないのがプロの仕事だとしたら、使用した人に感謝させるのが更にその上の仕事です。

間違ってもお客さんや仕事の相手に、不具合や不愉快を感じさせるような仕事はしたくないものですが、気付かないうちに慣れてくると気を抜いた仕事をしている場合があります。つまりプロとは、ビギナーズラックではなく常に安定した結果をお客さんに提供できることなりです。トイレを毎日きれいに使用できるように保っていること、雨の降る日なのに玄関が常に濡れていない状態にある会社は、プロの仕事をしています。野球でもプロの一流の投手は常に安定した結果を残しますから、シーズンで10勝以上あげることができるのです。それに対して二流の仕事は安定感がないのでムラがあります。継続する力の差がプロとアマチュアの仕事の境であり、継続する力を更に保ち続ける粘り強さを持っていることがプロの中の一流と二流を分けることになります。

トイレ掃除の場合、何も感じさせないのがプロの仕事で、使っている人が感謝したくなるようなトイレに仕上げているのが一流の仕事です。