コラム
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2011/8/26
877    脱どん底

素敵な人とじっくりと話をする機会がありました。20歳代から事業を興して順調に仕事を続けていたのですが、30歳を越えた頃、気がつくと負債3億円を抱え、事業を終えることを余儀なくされました。不動産を売却、自宅も売却して借家住まいから復活しようと社会に立ち向かったのです。

どん底に落ちると、落ち込む余地がなくなるそうです。落ち込んで考えている時間がなくなり、空いた時間は働いている時間となりました。自分で事業が出来ない分、働きに出て、一円でも多く稼ぎ借金返済と次の事業に備えていたのです。3億円もの借金があったのに自己破産をしなかった理由は、人に迷惑を掛けると二度と立ち上がれない、世間からは二度と助けてくれないことが分かっていたからです。何が何でも人に迷惑を掛けないように全て返済して、そして再び事業を興そうと考えたのです。

昼も夜も仕事を続け、45歳の時に借金を返済し終え、再び自分で事業に立ち向かったのです。45歳になって新しい仕事を興すとは夢にも思わなかったようですが、このままでは終われないと考え、少ない資本金で新しい仕事に取り掛かったのです。そうすると不思議な出来事がありました。応援してくれる人が次々と現れたのです。

ある人に理由を聞いたところ意外な答えが返って来ました。「借金を全て返し終えた人は信頼ができる」という答えでした。立ち直ったKさんは「借金を返すことは当たり前のことです。当たり前のことをして信頼されるとは信じられないのですが」と返すと、その相手の人は「当たり前の約束を守らない人が多いので、当たり前のことを当たり前にする人は信頼されるのです。まともに借金を返済する人は少ないのですよ。でもそんな人は信頼が無いので事業はできません」という回答でした。

当たり前のことが出来ることが強みだと知ったKさんは、45歳の時から9年間、昼夜を問わずに仕事に没頭しました。その結果、現在は5つの会社を持つに至っています。信頼がKさんを復活させてくれたのです。話をすると、今でも人とのご縁とご恩を大切にしていることが分かります。

「もう駄目だと思った時は何回もあります。その時に助けてくれたのは周囲の皆さんでした。皆さんがいるから今日の私があります。今も仕事を助けてくれているのも皆さんです。信頼を守ることが仕事だと思います」という言葉を伝えてくれました。

社会に迷惑を掛けない。周囲に迷惑を掛けない。そして人に迷惑を掛けないことが生きていく上で最も大切なことです。事業をしている人が借金を返さないのでいると信頼は失墜していき、助けがなくなります。

「人を騙す人はたくさんいますが、自分が悪いと思っていないのが共通点です。でもそんな人は、やがていなくなります」と話してくれたように、事業は信頼できる人同士でするものです。どん底から脱出して事業家として復活しているKさんの生き様を知ると、力が溢れてきます。こんな人と出会えるのは信頼力の賜物です。良い出会いも信頼が作ってくれるのです。