コラム
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2010/9/13
837 ふたつのこと
何とも素晴らしい労働組合の役員の皆さんがいたものです。平成22年7月末に退任したのがF書記長。執行委員の経験も少ないのに三役である書記長への就任を依頼されたのが二年前のことでした。本来、執行委員として経験年数を積んでから要職である書記長になりますが、Fさんはその能力を買われて依頼を受け、書記長を受けました。
そこでFさんは「歴代、書記長になった人は組合員の皆さんのために何をすべきか分かった上でなっているけれど、私は経験が少ないのでそれがない」と悩みました。引き受けたことによる不安が襲ってきたそうです。
どうせ大したことが出来ないなら、自分で出来ることから取り組もうと考えたのです。周囲を眺めると、朝出勤するのが早い人が大勢いることに気づきました。朝出勤した組合員さんの交流の場として組合の部屋を使ってもらえたら、職場のコミュニケーションが図れると思ったからです。
出来ることから始めよう。一番朝出勤の早い人に合わせて、それよりも早く出勤することを決意しました。心に決めた翌日から、朝7時30分に組合事務所の鍵はFさんによって開けられました。最初は事務所が開いていると気づかれませんでしたが、一人が気づいて立ち寄るようになり、また一人と増えていきました。やがて出勤してから、就業時間前に組合事務所に立ち寄る組合員さんの姿が見られることが当たり前のようになりました。

そしてFさんが思いついたことがもうひとつ。事務所に来てくれた人のために珈琲を用意しておこうと思いました。朝7時30分に事務所に来てくれた人には珈琲を飲んでもらうこと。一日の始まりとして、立ち寄った人たちがコミュニケーションが図れるスペースと、くつろげる素敵な環境をセットしました。
書記長に就任してから2年間。一日も休むことなく、この二つのことは実行されました。
実行する前に考えたことはシンプルです。

誰よりも先に職場に行って、朝7時30分に組合事務所を開けられるか。
→「よし。できる」。

珈琲を沸かして用意することができるか。
→「よし。できる」。

この二つの自問自答を行って、自分なら出来ると確信したので実行しました。
書記長として何が出来るか。実施したことは、朝7時30分に事務所を開けること、そして珈琲を用意することでした。感動しました。2年間も二つのことを実行し続けたこと、そして自分にできることをしようと決めたことをやり遂げたことに対してです。簡単なことのようですが、2年間の実績は簡単なことではありません。簡単だと思う人がいれば、このことを実行してみれば簡単でないことが分かると思います。
誰でも難しいことはできないのです。自分でできると思ったことが、自分でできることです。その思ったことでさえ、実行することは簡単ではないのです。自分の思ったことをやり遂げられる人は信頼できる人ですし、その後、どんな環境にあっても勝ち抜ける人です。何故なら、続けることの難しさを知り、続けた後に残る、信頼の重みと積み重ねることが、この先に続くための唯一の方法であることを知ることになるからです。
「私を書記長に任命してくれた人との約束を果たせたかなと思っています」。2年間の役員生活を終えた直後の感想です。
ひとつのことをやり遂げるだけでも素晴らしいことです。二つもやり遂げたのですから、これは歴史になります。2年間の活動が歴史として残る。これが約束を果たした素晴らしい結果です。