コラム
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2010/7/26
830 恩師
高校を卒業してから30年が経過しました。30年振りのクラス会がありました。と言うことは卒業直後に一度同窓会を開催したのですが、それ以来のことでした。実に30年振りに元クラスメートに再会しました。

その中で担任の先生であった岡崎先生と会うことができました。クラス会の冒頭、挨拶をしていただきましたが、まるで授業を受けているみたいな、幸せな10数分でした。

岡崎先生は現在68歳。既に8年前に定年退職されています。振り返ってみると30年前の先生は38歳だったことが判明しました。高校生の私たちから見ると、40歳代後半のような印象があったのですが、意外と若かったわけです。
私たちが卒業した後、二度高校を転勤して退職されていますが、その間、大病を三度克服して今に至っています。その経験から、
もう決して若くはない元教え子に、「健康でいられることが一番だから、健康を大切にして欲しい」と30年振りの授業のような話をしてくれました。

あれから30年。時は人を成長させてくれているものです。将来が見えていなかった高校生たちは自分の人生を見つけて逞しく生き抜いています。教師になっている人、農業を営んでいる人、編集者になっている人、公務員として頑張っている人など、様々ですが、確かに生きていることが分かります。 不確実性の時代を確実なものにするために生きている。そのことが素晴らしいことです。
知っている限り、誰も人生を投げ出していないようですから安心しました。岡崎先生に言わせると、「同窓会に来られる幸せを感じて欲しい。経済的にも社会的にも、ある程度のところにいるので参加できているのです。参加したくてもできない人がいるのですから、今の幸せを感じて欲しい」というものです。今を生きていることに感謝し、同窓会に参加できることにも感謝しています。

しかし恩師がいてくれることが、これだけ有り難いことだとは気付きませんでした。選挙の時も気にして近くまで来てくれていたようですし、陰になって応援してくれていました。「私の知人の議員になっているけれど、結局7期ほど県議会議員を務めただけでした。長いこと同じ場所にいたら駄目だよ。もっと上を目指さなければ。立ち止まらないで上を目指すこと」と、これも30年振りに恩師に教えをいただきました。涙が出そうな程の言葉です。高校生の頃は、これからの人生はゼロからのスタートですから、上を目指そうとしていたと思います。あれから30年も生きていると、現状にいることが、上に行くことよりも安全であることに気付いています。上に行く力を恩師が思い出させてくれました。
中学は3年、高校も3年で卒業です。議員の任期は4年。同じ場所からは卒業していかないと自分の皮はむけません。
「元気なうちに何かやっておかないとな」。簡単ですが、大切にしたい言葉です。

それにしても昭和54年当時。まだ38歳だった岡崎先生が大きく見えたのは何故でしょうか。これから旅立つ高校三年生を空高く羽ばたかせるために厳しく、温かく接してくれていたからだと感じました。
卒業式の日のことを聞きました。体育館で卒業式を終えて3年F組の教室でお別れ会をしようとしたところ、岡崎先生は「じゃぁな」と言って教室を去ったことを思い出しました。その理由は、「あのまま教室にいると涙が出そうになったので教室を出た」と聞きました。厳しい恩師でもクラスとの別れを寂しがっていたことが分かりました。
人には優しさが必要なのです。その優しさが、3年F組のみんなを立派な大人に成長させてくれた要因になっています。30年前も、そしてこれからも尊敬する対象として岡崎先生を慕いたいと思っています。