コラム
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2010/7/9
827 時と仁
「時間がない」は禁句ですが、日ごろ精一杯の活動を続けているとそう思ってしまうこともあります。しかし時間が足りないと思っている人が大半でしょうから、与えられている一日24時間を自分で使い切りたいものです。
そのためには時間を待つのではなくて、時間を作り出すことが必要です。時を作り出すには、成果を出すに至るまでの過程を縮小しなければなりません。一人よりチーム、チームより組織、組織に加えて人脈が必要になるのはそのためです。

チームの仲間は仕事の分担をしてくれます。組織は役割分担が明確になります。そして自分達だけでは成果を達成するのに不足する要因は、そのことに精通している人脈に頼るのです。それが時間を作り出すことなのです。

一日中、行動し続けている方がいます。口先だけの人よりも、やって見せてくれる人が一番だと話しています。現状を憂い変えなければと思っている人は大勢いますが、そのための行動を起こしている人はそれほど多くありません。言葉に行動を付随させることは簡単なことではありません。ただし言葉が燃料だとすると、行動は燃料を基にして走りださせてくれるエンジンですから、どちらも必要なのです。一人で素晴らしい言葉と行動を発動させることが難しいとしたら、チームで言葉を語り、そして行動することも方法です。

また人と接するに際して必要なことがたくさんありますが、仁をもって接することも考えておきたいことです。仁とは、他人に対する優しさを表す言葉で、儒教における最も大切な徳として中国における倫理規定のひとつになっています。孔子は、「君子は仁者であるべき」と説いたと聞いたことがありますが、他人に対する思いやりはトップが備えておくべき大きな資質です。

そして仁を分解すると、人と二に別れます。つまり、あなたのような人は二人といないのですと考えたいものです。二人といない大切な人と巡り合っているのですから、その人を大切に、そして思いやりを持って接することが人にとって大切なことなのです。

二人と存在していない個人。まず相手を大切にすることから始めたいのが行動の第一歩です。

昔存在していたある知事の話を聞くことがありました。その知事は、仕事の能力はそれほどでもなかったのですが、周囲の人からは好かれていたようです。そのため職員時代に上司から抜擢され、最後には知事にまでなったのです。その間、仕事の能力がある職員を飛び越えて出世をしていったのです。そのことを指して「仕事ができなかったのに」と話す人もいますが、違う見方もできます。もしその知事が仁を備えていなければ、周囲の人に好かれることはありませんから、上司に可愛がられることもありませんし、知事に当選することもなかったと思います。