コラム
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2010/4/6
817 生まれ変わる
春のセンバツ高校野球大会が閉幕しました。決勝は沖縄県の興南高校と東京都の日大三高の試合となりました。結果は沖縄県の興南高校が初優勝を果たしましたが、個人的には最も印象に残る大会となりました。

興南高校監督の「甲子園という大きな舞台で一人ひとりが生まれ変わったような感じがしました」というコメントは素晴らしいものでした。

そして閉会式に奥島孝康大会審判委員長からは、向陽高校の健闘を称えた発言をしてくれました。21世紀枠での出場は文武両道を達成した高校の誇るべきもので、改めて胸を張りたいと思うものです。

そして決勝戦の顔合わせから、和歌山県勢のことを改めて思い出しました。二回戦の戦いで和歌山県勢の向陽高校と智弁学園和歌山高校の二校は敗退しましたが、その相手校が強かった訳です。向陽高校は準優勝した日大三高に敗れましたし、智弁学園和歌山高校は優勝した興南高校に敗れた訳です。二回戦での敗退は残念に思いましたが、優勝と準優勝の高校に敗れた訳ですから、もう一度敗れて悔いなしと思いたいものです。

もしかしたら、和歌山県の二校が決勝戦を戦っていたかも知れないと、想像するだけでも楽しくなります。夏に向けて二校の戦いが楽しみです。

ところでセンバツ出場前に向陽高校の話をしていたことがあります。それは「センバツに出場するという目標が決まったことから練習の中身が違ってきました。この大きな目標がある時期は厳しい練習でも楽しいものですから、選手達が最も伸びる時期です。本番までには今よりも上達すると思います」というものでした。

人は大きな目標があるから厳しい練習にでも耐えられますし、耐えた結果、自分が伸びているのです。このことは社会人でも同じことが言えます。困難な仕事をやり遂げたことによって飛躍的に実力が伸びることはあり得ることです。と言うよりも困難に立ち向かうことが実力を伸ばすために必要なことなのです。

但し向陽高校の選手と同じように、困難な出来事を厳しいとばかり思っていてはいけません。達成すべき目標を掲げておくことで、困難を克服する過程が楽しくなります。どの方法で解決しようか考えることや、キーパーソンを口説き落とすための手法を思い巡らせたりすることは楽しい作業です。そして困難なことを一つずつ切り崩して光明が射した時、目標は達成できていますし、それに相当する実力が身についています。興南高校監督の言うところの「生まれ変わった」状態になるのです。

生まれ変わった状態とは、実力が向上してそれまで困難だと思っていたことが、次回は達成が見込める状態になることを言います。向陽高校の選手にとっては、夏の甲子園出場夢物語ではなくなっていますし、興南高校に至っては夏の甲子園出場から甲子園での優勝が目標に変わりました。

向陽高校がこの夏の甲子園出場を語っても、誰も笑う人はいなくなりました。目標を達成させたことは、その前後で評価が変わる。それほど凄いことなのです。