コラム
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2025/1/8
1960    巨人の肩の上に立つ

令和7年1月4日。毎年恒例となっている過年度に向陽高校を卒業した生徒の同窓会に出席しました。今年は2022年卒業生の同窓会で、成人式のお祝いを兼ねて開催したものです。同窓会長として松本校長先生を始めとする先生方と出席したものです。ここでお祝いの言葉を伝えた後に、校長先生のお祝いの言葉を聴きました。

校長先生はニュートンの言葉を引用して卒業生たちに語りかけました。凄く印象的だったので、引用したニュートンの言葉とその意味を記します。

先生は「ニュートンの言葉に『もし私が他の人よりも遠くを見渡せたのだとすれば、それは巨人の肩の上に立っていたからだ』という言葉がある」と話しました。その意味は次のようなものです。

「ニュートンは、自分の業績が過去の偉大な科学者たちの研究に支えられていることを認めたことを意味しています。研究者は先行研究を調べ、今ある知識の最前線を理解した上で、新しい発見を付け加えていきます。このように学問は次々と発展し、新たな知識が次の世代へと引き継がれていくのです。それに加えて学問の進歩を象徴するだけでなく、過去の偉大な発見者たちへの感謝の気持ちも含まれているのです」というものです。

研究者だけではなく私たちが関わる仕事や話をする内容などすべてに通用する概念だと思います。私たちは先人たちが築いてきたものの上に立って生きています。どんな仕事でも先行研究や過去の事例を調べてから自分の仕事を形作っていきます。

県議会議員の最大の役割である一般質問も同じで、原稿を作成する時は、過去の議会議事録や先輩議員の発言内容を調べ、その趣旨を理解してから同類の提言にならないようにしています。もし類似した内容になる場合は、時代背景の違いや社会の変化に基づいて提言内容を進化させなければなりません。

時代が進んでいるのに、社会が変化しているのに、過去と同じ位置に立って議会で提言することに意味がありません。県議会の事例における巨人の肩の上に立つとは、社会の価値が変化している場合、過去を尊重しつつも上書きすることを恐れずに、その時代の価値を採り入れた提言をするということです。

過去、県議会一般質問で「スケートボード練習場の設置」を提言したことがありました。

それ以前は、スケートボード練習場を県がつくる必要がない時代がありましたが、2020東京オリンピックで正式競技になることを見据えると、人気の高まりや競技人口の増加、スケートボード協会の要望などを踏まえて「県が練習場をつくるべき」という判断をして一般質問で取り上げたのです。結果として、東京オリンピックまでに間に合うよう練習場を設置することができました。

また少年野球の合同チームのユニフォームの統一の問題も、県議会一般質問で取り上げました。少年野球の合同チームがある近畿大会に出場するには「ユニフォームを統一する必要がある」という大会規定も昭和の価値に基づいたものです。今の時代の価値に照らし合わせると「少子化で単独チーム編成が難しいことから合同チームが増えていること」「生き方も含めて生活の価値が多様化している令和の時代にユニフォームが違うから出場できないという大会規定は見直す時期になっている」などの価値に基づいた提言をすべきだと判断しました。

これらは過去を否定するものではなく、過去の価値を尊重しながらも時代の変化に伴う価値観を採り入れる必要性を訴えたものです。時代の価値観が変わっていなければ、取り上げる必要のないものでした。それまで積み上げてきた巨人の肩の上に立ち、時代を見据えて少しだけ上乗せしたものです。

せめて巨人の肩の上に立つところまで行かなければ、それ以上のものを上乗せしていかなければ、先人たちに申し訳ないことです。

松本校長先生は、これまでも卒業式などで偉人の教えを引用して伝えてくれていますが、今回も良い教えを頂いたことに感謝しています。