コラム
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2022/3/11
1875    歴史から学ぶ

「歴史から学ぶ」よく聞く言葉です。ところが何を学ぶのかは人によって様々です。現代に生かす歴史の見方の話を交わしました。

一般的にバランスを保つには5対5、イーブンの関係が適していると思っています。ところが5対5の関係は否が半々なので、やがてそこからバランスが崩れていくことになる不安定な関係だというのです。

実はバランスの取れた関係とは6対4の関係だということです。その時、力の強い方に6のバランスを取り、拮抗しているけれど今は立場が弱い方には4のバランスを取ることで安定させることができるのです。

つまり力の強い方の立場を立てながら、拮抗しているもう一方の立場も考慮することがバランスを取ることになるのです。

ところが社会の安定を保つうえであり得ないことを主張している人もいます。例えば9対1、極端にいうなら10対0でなければバランスが取れないと考えている人です。絶対王政や共産主義でもない限り10対0や9対1の関係は成り立ちません。

もし9対1の関係を築けたとすれば、不満のある1の力が徐々に大きくなり9を浸食していきます。小さな数字の1が4に近づいていくと絶対安定が崩れて安定さがなくなります。

ですから最初から6対4のバランスを考えて対応することが、社会を安定させることにつながります。

歴史は常に社会の安定を求めて変化しています。行き過ぎると戻され、盛者はやがて衰えていきます。拮抗する力と力の間に緩和空間があることで争いを抑えられ、社会を安定させているのです。6対4は微妙な力と力のバランスを保つための歴史から見た黄金の比率なのです。

現代で考えると二大強国であるアメリカと中国とつきあう必要がある日本の立場のようなものです。現代の感覚としてアメリカに6、中国に4のバランスを保っているように感じます。

これがもしアメリカに10の全てをシフトするなら、中国との対立が鮮明になりますから輸出入の経済関係が崩れ、それぞれの同盟国との関係も崩れていきます。現代の国際貿易関係からすると比較優位が崩れるので、わが国の経済力は弱まっていきます。ではアメリカと中国との関係を5対5にするとアメリカが日本に不満が起きるので、やはりバランスが崩れることになります。現代までの日米関係の歴史を知っている中国は、10のうち4の関係をわが国と築けていることでバランスを保てているのです。

敢えて少しあいまいな部分を残すことでバランスを保とうとしているのです。白黒ではなくグレイな色を混ぜることでバランスを保つ手法は、これまでの歴史から学んでいることです。歴史的にみてわが国は大国、列強が力を保持している時代においても独立し続け、それらの国と対等の立場にいました。力と力の争いに持ち込むのではなくて、大国とのバランスを取りながら支配されることなく尊厳ある国でいたのです。日本人のバランスを取れるしなやかな強さが、大国と対等の地位を築いてきた要因の一つだと思います。

日本は曖昧さで生きてきたのではなくて、大国と大国とのバランスを取れるしなやかな強さを有しているから常に一定の存在を示してきたと思います。現代日本のあり方も、大国とつきあってきたわが国の歴史から学ぶべきことです。