コラム
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2022/3/10
1874    永遠のゼロ

以前からずっと観たいと思っていた「永遠の0」を観ました。映画も素晴らしかったし、台詞も心に届きました。「命を次の世代へとつないでいくこと」「物語を続けることだ」「死を恐れていたのではない。大切なものを護ることができなくなることを恐れていたのです」などの台詞が突き刺さりました。

あの時代は、生きたいけれど生きることが難しかった時代であり、命を懸けても大切なものを護れなかった時代でもあったのです。主人公の宮部久蔵さんは時代に特攻する直前まで背く行為を貫いたため「逃げ回ってばかりの臆病者」と言われることもありました。しかし実際は「自ら生きることによって大切なものを護ること」が大事なことだと分かって、「命を大事にして戦争が終わった後の日本を支えること」を若い隊員たちに伝えたのです。

「生きるため、護るために戦うことと、死を選択して命を絶って勝つこととは意味が違う」ことを強く語ってくれる内容です。

宮部さんが若い大石隊員と特攻前の時間に会話をしています。

「今初めて気づきました。雑草が揺れていること。川の水がこんなに冷たいこと。今まで何とも思っていなかったことが、こんなに愛おしいなんて」

それに宮部さんは答えます。

「戦争が終わった後の日本はどんな国になっているのだろうなぁ」

当たり前のことに感謝できる大石隊員のことを戦争後の日本を託せる人物だと確信した瞬間だったと思います。その後、二人は沖縄海戦で特攻することになりますが、大石隊員は飛行途中のゼロ戦機の故障で生き残ります。特攻出撃直前に宮部さんはゼロ戦の不調を見抜き、大石隊員に「交代してくれ。俺は古いタイプのゼロ戦に乗りたいんだ」と言って乗る飛行機を交代したのです。宮部さんが死を覚悟した瞬間であり、感性のある若い大石隊員に後を託した瞬間でもありました。

戦争が終わりました。大石隊員は戦後の荒れた日本の状況に衝撃を受けます。生き残った人たちは今日の日を生きることが精一杯だったからです。戦火のため焼けた後に建てられたバラックの家屋、食べ物がない、お金がない、仕事がなく、あったとしても食事以上に稼ぐことが出来ないなどの環境から脱するのに、どれだけの苦労があったのか想像もできません。

そして大石隊員は宮部さんにこう言います。「そしてこれから生きていく子どもたちやそのまた子どもたちは、この戦争のことをどう語り合っていくのか」

戦争を知らない世代は、当然のことですが大戦のことを語ることは出来ません。話を聞く、本を読む、映画を観るなどによって輪郭が見えてくる程度だと思います。経験した人、その話を聞いた人がそれを語り継ぐことは、平和な世界を築くためにとても重要なことですから、絶対に語り継ぐべきことなのです。戦争を知らない世代が、鹿児島県の知覧に行って大戦で命を落とした若い特攻隊員の手紙を読んで「生きること」「生きていること」の意味を感じるのも、後々に語るための一つの行動です。

2022年2月、ロシアがウクライナに侵攻しています。「永遠のゼロ戦」とは、戦争の結果もたらされるものは何もないので、永遠にゼロ、つまりこの世から封印すべきものだと伝えてくれているように感じます。