コラム
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2021/9/21
1847    教育の仕事

社員教育の仕事を担当したことがありました。教育担当は教育計画を策定することと自らが講師となり教育を行うことが仕事です。当時教育担当になった時、上司から「毎月一回の教育を実施するように」と指示されました。当然のことですが社員は担当の業務があり、社内教育は「仕事を邪魔する存在」であり「今更勉強なんて面倒なので受けたくない」というのが本音でした。自分が教育担当でなかったとすれば十分に理解できる思いです。

大変なのは毎月の教育テーマを決めることと講師を依頼することでした。自分は教育が本業なので講師を担当することは抵抗がないのですが、他の部門の管理職に社内教育の講師を依頼すると大きな抵抗がありました。「忙しいからそんなことをやっている時間がない」「社内教育なんて無駄」「教育資料を作らなければならないし、部門以外の人に講義をしても聞いていない」などの批判的な意見がありました。

それでも自分の担当業務なので、業務指示を受けて策定した教育計画に基づいて毎月一回の教育を実施しなければなりません。参考までに教育計画は決裁を受けている公文書ですから、計画通りに進める必要があります。

たった毎月一回の教育ですが、感覚的には教育が終わったら、もう次の教育の準備に取り掛かるというイメージです。しかも教育受講者には、その次の教育に反映させるためのアンケートを書いてもらうことになっていました。評点は5段階で、評点の理由を書いてもらう様式のアンケートでした。項目は講師について、テーマについて、講義の内容についてなどがあり、受講者は1から5で評価するのです。

評価点は平均4以上を目指すことにしていたので、4を上回ると安堵したものですが、3.8などの評価が出た場合は、その理由を付して教育結果を上司に回す必要があったのです。

その場合、講師に「講師の評点が3.8だったけれど、何が原因でそうなったと思いますか」などの質問をすることになります。只でさえ、講師を引き受けることに抵抗がある他部門の管理職ですから、低評価をされたことに不満がありますし、その原因を聞きに来る若い教育担当者は決して歓迎される存在ではないのです。

しかもシリーズものの教育の場合「また来月も講師をお願いします」と依頼しなければならないのです。良い顔をされないのは当然のことです。

ですから講師と事前に打ち合わせる時間を十分に確保して、何が何でも次回は4以上の評価を受けるようにしようと思いました。講師には「前回、悪かった点はこの点とこの点です。だからこう改善しましょう」と提案することになります。分かりやすい資料の作り方、難しいと評価された場合はテーマを変更するなど、改善しながら次の教育に挑むことになります。

自分が講師を担当する場合は自分が主体で改善できるのですが、講師を依頼している場合は効果的な講義をしようなど、その気になってもらう必要があります。その気になってもらうことは意外と難しいもので、その気になってもらうのは日頃からの人間関係に尽きると思います。「片桐君がそう言うならやってやろう」と思ってもらわなければ、良い講義になりません。分かりやすい資料作りと講師との人間関係を作ることが、人の教育機会をつくる立場の人に必要な資質です。

担当業務以外のことを学んでもらうことは意外と難しいことなので、分かりやすく丁寧な資料づくりと、その教育の趣旨を理解してもらって受講してもらうこと。そして講師との人間関係を作ることが必要です。そして社会人には疎かにされている教育ですが、教育は知識付与だけではなく気づきと向上心、そこからの自己研鑽へと発展する機会となるものです。

このように無形の財産を与える機会となるものが教育であり、決して無くすことができないものなのです。